落雷の警報・予測はできる? 雷雲の中の電気が見たい。
雷の被害
雷は多くの経済的・人的被害をもたらします。雷害は、落雷の直撃によるものだけではありません。建物近くで落ちた落雷による電流は、サージ電流として電源ケーブル等を通じ室内にも侵入します。一般家庭におけるスマート家電や工場等における自動化された生産機械に搭載された電子機器は、このサージ電流に弱いことが懸念されています。最新の高価な生産機械が、工場近傍の雷一発で停止・故障する可能性もあります。雷雲接近時に電源ケーブルを抜いてしまうことが一つの対策です。ただ、時期によっては毎日のように発生する雷雲に対し、生産機械を毎回停止させていては仕事になりません。既存の耐雷技術を基盤としながら、雷対策も進歩してゆく必要があります。
未解明な部分が多い落雷現象
落雷は身近な自然現象ですが、その発生メカニズムは未だ十分に理解されていません。雷は、雲内で生じた静電気に起因する放電現象です。雲内にたまった電荷を地上へ放電するのが落雷です。落雷の警報・予測技術の開発においては、落雷が発生した際、雲内のどの程度の高さに、どれくらいの電気がたまっているのかを知る必要がありますが、十分な観測データがないのが現状です。
雷雲がためている電気量を測る
雷雲内でたまる静電気の観測には、地上における静電界の多地点計測が有効です。従来の静電界センサは、専門家でも扱いが難しい、繊細で複雑な装置でした。また、多地点での静電界計測には、膨大なコスト(お金・手間)がかかりました。
しかし、近年のセンサ・通信技術の進歩は、静電界センサを扱いやすいものとしました。最新の研究では、観測エリア内に静電界センサを10〜20機設置、各センサの計測値を統合することにより、上空の静電気量を数値化することに成功し始めています。それも、実用化が期待できるコストの範囲内でです。雷という現象そのものを知るための理学的な研究が進むことで雷に対する警報・予測が可能となり、雷害を防ぐための工学的な研究が進むことが期待されます。
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先生情報 / 大学情報
公立小松大学 生産システム科学部 生産システム科学科 准教授 山下 幸三 先生
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