電磁波の観測とAIを組み合わせて、天文学研究を加速!

宇宙の画像をAIで判定
天文学というと、夜、望遠鏡で星の光を見るイメージがあります。しかし今は、電波や赤外線など宇宙からの電磁波を観測して解析し、画像にする方法も活発に進められています。これまで見えなかったものも観測できるようになり、たくさんの画像データが蓄積されてきました。そこで、その画像に何が写っているかを、AIに判断させようという研究が行われています。
リング状構造の判定を一気に進めるAI
その一つが、「リング状構造」を判定するAIです。星は生まれるときや消えるときに高温になります。すると、周りに漂っているちり(さまざまな固体の物質)が熱せられ、赤外線を発します。それを赤外線望遠鏡で観測して画像にすると、リング状の構造が見えるのです。リング状構造は、星の生成や消滅を観察するための重要な観測対象です。
これまでに人の目でリング状構造と判断した画像やそれ以外の画像をAIに学習させて、NASAが公開している広範囲の宇宙の画像を分析したところ、一気に1000個以上のリング状構造が見つかりました。人の目では1000個見つけるのに2年かかる作業であることを考えると、天文学の研究が大きく加速すると考えられます。
観測機器、分析機器の進歩
宇宙空間に漂う物質の中で、高温で比較的大きなものは赤外線を発しますが、ガスのような小さな分子や原子で低温のものは電波を発しています。それを受信して解析した画像からは、ガスの量や密度がわかります。それを判定するAIの開発も行われています。今後も観測する対象によってさまざまなAIが開発されると考えられます。
最近では高性能な電波望遠鏡が開発され、遠く離れた銀河から届く微弱な電波も観測できるようになり、AIで解析するべき画像も増えています。また、市販の電子機器やパソコンの性能が上がってきており、それらを使ってアマチュアでも簡単な電波観測・分析装置が作れるほどです。こうした機器の進歩により、宇宙の姿は少しずつクリアになっています。
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新潟大学創生学部 創生学習課程 准教授金子 紘之 先生
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