新しい医療計測技術が世の中の役に立つまで
医療の入り口となる医療計測
人の体の健康や病気の状態を測ることを「医療計測」といいます。医療計測の分野では単に血圧や心拍数を測るだけではありません。病気を見つけるための健康診断などの計測と、病気になってから治療の有効性を確かめるための計測があり、どちらも医療の重要な指針となるものです。また、病気ごとに示す兆候を特定し、その度合いを測る方法を確立する研究も続けられています。
乳がん検診を正確に手軽に
女性が一番かかりやすいがんである乳がんは、罹患者数も死亡者数も年々増加の傾向をたどっています。早期発見により9割が治るというデータがありますが、日本の乳がん検診の受診率は40%台と世界平均と比べてとても低いのが現状です。また、現在の検診の主流であるX線検査のマンモグラフィーでは早期発見が難しく、血液検査では乳がんを特定できません。
そこで、乳房内の体液に着目した新しい検査方式が研究されています。体液には多くのタンパク質が含まれており、その中から乳がん患者にのみ多く見られるものを特定すれば、その物質が乳がんの存在を示す目印(マーカー)となります。すでに解析によりマーカー候補となるタンパク質が見出され、現在は検診の実現化に向けたサンプリング機器の開発や臨床研究の段階まで進もうとしています。
研究の成果が世の中に普及するには
このような新しい技術は、原理の究明と装置や試薬の開発だけでは世の中の役に立つまでに至りません。例えば、感染症の種類を判別する技術がありますが、これにはカブトガニの血液が細菌のかけらに反応することが発見されてから、それを利用した機器が広く普及するまでに約半世紀もかかりました。それまでには、材料やコンピュータなどの科学技術の発展が実現を牽引し、世の中のニーズが普及の後押しとなりました。新しい技術が普及するには、何に役立てるかという用途の発見と研究、それを生かす開発、公定法や学会が定めるルールの制定のほか、時代やニーズの巡り合わせも大事なポイントなのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
滋慶医療科学大学 医療科学部 臨床工学科 教授 大石 晴樹 先生
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