頼れる「救急救命士」の背景
医学の基礎を学んでから
救急救命士になるための入り口は医学です。実習はもちろん重要ですが、まずは、人体の構造や機能を総合的に理解していく必要があります。目に見えない一つの細胞から組織、個別の臓器や器官系などについて学ぶ基礎医学はもちろん、更に救急医療から災害医療の仕組みまで、知っておくべきことはたくさんあります。救急業務の現場では、傷病者の観察から救急救命士法に基づく気管挿管や薬剤投与などの救命処置まで、どれも医学的知識が求められるものばかりです。
訴えは千差万別
救急車を必要とする傷病者は、呼吸が苦しい、熱や吐き気がある、体が動かせないなど、千差万別の訴えがあります。子どもから高齢者まで、年代により身体の特徴も異なります。意識障害や認知症などでコミュニケーションが取れないことも多く、救急救命士は、傷病者の状態を、呼吸や血圧、脈、体温などのバイタルサインとともに読み取っていきます。測定したバイタルサインと「症候」が合わない場合は、服用している薬の影響も考慮します。
観察した症候から総合的に何が必要かを判断する
傷病者が訴える頭痛などの症状と、救急隊員などによって客観的に観察される顔面蒼白などの徴候を併せたものを「症候」といいます。救急隊員は「疾病救急医学」などで学んだ疾病(病気)に関する知識によって、心筋梗塞なら「動脈硬化などが原因で心臓の血管が詰まり、強い胸痛が20分以上続く。左肩や下顎の痛みを訴えることがある」ことなども知っています。
しかし、救急車を呼んだ傷病者に病名は書いてありません。交通事故などでも、どこを骨折して、どの臓器が損傷したのかは書いてありません。ですから、受傷のメカニズムを念頭に傷病者を観察して「症候」を読み取ります。傷病者の訴えや観察結果などから病気や損傷部位を推定して、病態を総合的に判断します。そして必要な処置をしながら適切な医療機関に搬送して命を救うのです。このような救急業務を円滑に行うため、「症候」について学ぶ「救急症候学」が必須になっているのです。
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