汚れた水をリサイクルする、小さな微生物の大きな可能性!

汚れた水をリサイクルする、小さな微生物の大きな可能性!

土壌や水の汚れを除去する微生物

土壌や水には、アンモニアを窒素ガスに変えるなどして取り去ってくれる微生物がいます。肉眼ではわかりませんが、DNAやRNAを検出すればどこにどんな微生物が生息しているか把握でき、環境を浄化する力を持ったものだけを元気にさせることもできます。
微生物はさまざまな特長があり、メタン生成古細菌のように浄化する力は弱くても長持ちするものもいれば、浄化する力が強い代わりに衰えるのが早い微生物もいます。これらをうまく組み合わせれば、有害物質を排除した下水を河川に流すことができるのです。

世界は水不足の危機にある

実は世界的に見ると、水資源は不足しています。飲料用だけでなく、農業や工業などあらゆる場面で必要になるため、使える水は限られているのです。2050年には世界の総人口が100億人に達すると言われている中、水を循環利用するシステムのニーズが高まっています。特にアジアの人口は急増中であり、下水処理設備の行き届いていない地域も多いことから、微生物を使った浄化システムが導入され始めています。例えば、水源の乏しいシンガポールでは産業排水を再利用するなど、水のリサイクルに力を入れています。

砂漠で魚の養殖ができる?

人口が増加すると、食料問題も起こります。その際、不足しがちになるのがタンパク質です。しかし牛や豚の飼育数を増やし過ぎると、穀物をエサに使うことから食料難を加速させてしまうリスクがあります。そこでターゲットとなるのが魚の養殖で、ここでも水の循環システムが役立ちます。
遠洋の魚を沿岸で育てることができますし、循環システムを使えば水を替える必要もありませんから、内陸の砂漠地帯でも養殖が可能です。循環システムで使うのはごく小さな微生物ですから、装置自体もコンパクトです。したがって車の水槽に付ければ、魚を生きたまま運搬することもできます。養殖産業だけでなく、魚のデリバリーシステムも根本から変わるかもしれないのです。

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長岡技術科学大学 工学研究科 技術科学イノベーション専攻 教授 山口 隆司 先生

長岡技術科学大学 工学研究科 技術科学イノベーション専攻 教授 山口 隆司 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

土木工学、微生物生態学、水環境学

先生が目指すSDGs

メッセージ

泥水をすくうと、約1000種類の微生物がいます。しかしその機能がわかっているのは半数程度にすぎません。特に海底は未知の微生物の宝庫であり、人間の役に立つ機能を持った微生物も数多く存在していると考えられています。そうした未知のことを学ぶこと自体、とても面白いのですが、最も大事なのはそうした「資源」をいかに人が使える技術に生かしていくかです。知識はほかの分野の知識と結びつきます。さまざまなことを学んでおけばきっと役に立つことでしょう。

長岡技術科学大学に関心を持ったあなたは

長岡技術科学大学は、大学院に重点を置き、実践的な技術の開発を主眼とした教育研究を行う工学系の大学として、新構想のもとに設置され、実践的・創造的な能力を備えた国際的に通用する指導的技術者・研究者の養成を行い、これらを通じて社会との連携を図ることを基本理念としています。
大学はまた、勉学の場であると同時に人間形成の場でもあります。美しい豊かな自然に恵まれた環境と、国内はもとより世界の各地から集う学生たちが豊かな人間性を養い、創造性とチャレンジ精神を求め、友情を育む潤いのある大学生活の場があります。