脳血管手術の相棒となるロボットとは?
頭を切らずに脳血管を手術するには?
脳の血管が詰まったり、破裂しそうになったりした場合、治療や手術が必要です。しかし、頭蓋骨を切って行う手術は患者の体への負担が大きいものです。そこで、脚の付け根の血管から「カテーテル」という長い管を入れて脳の患部に到達させ処置をする方法があります。カテーテルの先からステントという網目状の金属の筒を入れて血管を広げたり、血栓を取り除いたり、血管のこぶに柔らかいプラチナ製コイルを詰めて破裂を防いだりします。ただし、脳内を直接見ることはできず、X線の透過画像を見ながら処置をするので熟練した技術が必要で、医師たちは弱いX線を浴びます。
脳血管手術支援ロボットに必要なものとは
そこで開発が進められているのが、脳血管手術支援ロボットです。手術支援ロボットというと、おなかなどに開けた小さな穴から内視鏡を入れて、遠隔で医師のアーム操作によって腹部や胸部を手術する「ダヴィンチ」が有名です。ダヴィンチになくて脳血管手術支援ロボットに必要になるのが、力覚(力の感覚)や触覚のセンサです。ダヴィンチは、視覚的に手術部位の状態をとらえられますが、カテーテルはX線画像を見ながら挿入するので、支援ロボットには血管を傷つけないようにするためのセンサが欠かせません。しかし、センサの精度を上げることが難しい上に、実際に人の血管を使って試験をすることが難しく、実用化への壁となっています。
ベテラン医師の技術を継承する
現在、センサによって、カテーテルを入れる力加減を数値化する技術はほぼ確立しています。力加減が数値化できれば、ベテラン医師の力加減をお手本に、若い医師も同じように治療をすることができます。さらに将来、自動でカテーテルを挿入する手術ロボットができれば、医師の手術中のX線被ばくや感染症にかかるリスクもなくなり、医師や患者への負担も減るはずです。ロボット工学は、機械・電気電子・情報処理の幅広い知識を活用して、医療の世界でも貢献しようとしています。
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先生情報 / 大学情報
愛知工科大学 工学部 電子ロボット工学科 教授 永野 佳孝 先生
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