環境問題を生み出す「人間」について考える環境哲学とは?
環境問題から「人間とは何か」を考える
地球温暖化による気候変動など、世界各地でさまざまな環境破壊が問題視されています。そしてそうした問題を引き起こしているのは、確かに私たち人間です。しかしそもそも人間とは、どのような存在なのでしょうか。そしてなぜ人間は、環境問題を引き起こすのでしょうか。環境問題や持続可能性(サスティナビリティ)の問題から出発しつつ、その背景を「人間とは何か」という哲学的な問いにまで遡って考える学問、それが「環境哲学」です。
自然環境と人工環境のズレが環境問題の根本
人間がほかの生物と根本的に異なるのは、人間が自然環境のうえに人工的な環境をつくりだす能力を持っていることです。最初の石器が誕生してから今日のロボットやAI(人工知能)に至るまで、人間がつくりだした人工環境は数100万年のときをこえて次世代に受け継がれ、しかも膨張を繰り返してきました。しかし例えば1万年ほど前に農耕が成立し、200年ほど前に化石燃料に支えられた社会が成立するなかで、いつしか人工環境は自然環境との間にズレを生じさせてしまいます。私たちが環境問題と呼んでいるものの背景には、実はこのふたつの環境の間にあるズレが深くかかわっているのです。
正解のない問いに、意味を見いだす
環境問題の解決に向けて努力をすることは、ときとして無意味なように思えるかもしれません。実際、人間の歴史を振り返ってみると、人間の予想は常に外れていて、裏切りの連続だったからです。もしかすると、21世紀の私たちが行ったことがまったく無駄な努力に終わってしまう可能性だって本当にあるのです。しかし大事なことは、この世界のほとんどの問題は「正解がない」ということを受け入れたうえで、そのとき大事だと考えたことに対して精一杯向きあうことだと言えます。私たちが過去の時代に精一杯生きた人々を尊敬できるように、たとえそれが間違っていたとしても、私たちが精一杯生きたという事実そのものが、未来に生きる人々を勇気づけることになるからです。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 現代システム科学域 環境社会システム学類 准教授 上柿 崇英 先生
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