世の中のマーケットを動かすのは、人である
なぜそれを買うのですか?
人は、一度これを買おうと決心しても、まったく別のものを買うことがあります。なぜでしょう。それは、ふと目に留まったとか店員に勧められたとか、さまざまな知識と思惑が買い手と売り手の間で交錯するからです。人はどういう心理状態や考えを経て、購入の決断をするのでしょうか?
2016年の電力自由化で、電力会社を選べるようになりました。それにもかかわらず、例えば日頃利用するスマホの通信会社と同系列の電力会社を、他社と比較することなく契約したりします。これは、もともとある契約に紐づいた購入行動です。
売り手と買い手との共同作業
「マーケティングに正解はない」といわれながらも、売り手は買い手の商品選択を分析し、購入行動を正しく理解することが、正しい売り方につながるとされてきました。ところが最近、さらに発展した考え方が出てきました。消費者の行動を、わざとしっかりと想定せず、意図的に買い手の想像力に任せる余地を残すというものです。
ある会社が、健康志向の人をターゲットに無糖の茶系飲料のプロモーションを行ったところ、必ずしも健康志向ではない多くの若者の心に響き彼らに購入されました。CMでは明るい雰囲気で「たくさん食べて、たくさんお茶を飲む」とアピールしたおかげで、若者の想像力を働かせる余地があったのです。売り手と買い手との共同作業によって正解らしきものができる、それがマーケティングだというのが新しい考え方です。
マーケットの主人公は人
この考え方の下では、売り手は少々冒険的な商品を提案できます。例えば大手化学メーカーのワンプッシュ式の洗剤は、それまでハンドソープやシャンプーなどでは一般的だったワンプッシュのボトルを、洗濯洗剤に初めて取り入れたものです。
売り手も買い手も人間です。人の行動を考える社会学や哲学、経済学の視点も取り入れながら、人を中心に広くマーケットを考える視点が必要なのです。
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先生情報 / 大学情報
愛知淑徳大学 ビジネス学部 ビジネス学科 現代ビジネス専攻 教授 大塚 英揮 先生
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