地域産業デザインとブランディング
地域産業をブランディングする
昨今、地域の活性化を図るには、その地域における産業をより育成することが必要だといわれています。地域産業とは、伝統産業だけではありません。その地域で発展している通常の産業も地域産業です。例えば、伝統陶器でなくても陶器のつぼを作っていれば地域産業ですし、工場で製造される大量生産品もその地域の有力な産業です。その地域の持つ風土・歴史が生み出した産業全体の総称が、地域産業なのです。
この地域産業の育成のために、さまざまな試みが各地方で行われていますが、その中で「ブランディング」の重要性に注目が集まるようになりました。「ブランディング」とは、「ある産業をブランドとしてどう確立していくか」というブランド化するための術(すべ)のことです。山口県の伝統工芸としては、萩焼(はぎやき、陶器)や大内塗(おおうちぬり、漆器)が有名ですが、これらが固有の地位を獲得していくための作戦のようなものです。
産業・文化の育成に貢献する「地域産業デザイン」
地域産業や文化を「ブランディング」する時には、デザインの専門家も重要な役目を果たします。その産業が持つ特長を十分に理解した上で、世の中の人々にアピールする必要があるためです。そのために、「地域産業デザイン」というデザイン分野が生まれています。このデザインは、「地域の文化を生かしたデザイン」と説明することができるでしょう。「地域産業デザイン」を考案する時には、その産業を知っているだけでは良いものを作ることができません。その産業が属している分野全体の状況や歴史などを知る必要があります。例えば、少なくとも日本全国の陶芸技術や歴史に通じていなければ、萩焼が持つ特長を理解することはできません。
現在、各大学では、「文化創造学」などの名称でデザインの専門家を育成していますが、これは、製品のデザインを考案するにとどまらず、このように産業・文化の育成に貢献できる人材を育てているのです。
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先生情報 / 大学情報
山口県立大学 国際文化学部 文化創造学科 教授 山口 光 先生
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デザイン学、文化創造学先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?