ツイートから見えてくる、観光客と地域をつなぐ「共創」の力
観光客急増の結果
観光産業は世界中で拡大しています。新型コロナウイルスの感染拡大前の2019年は、全世界の観光客は14億6,100万人、前年比5,400万人増にもなり、日本においても訪日外国人の消費額がGDPの10%に迫る4兆8,135億円を記録しました。ただし、観光客が急増した地域では、交通機関や商店の混雑、ホテルの急増による地価の高騰といった「オーバーツーリズム」という現象が起こっています。また写真撮影や騒音、ごみなどに関わるマナー違反により地域住民の生活環境が乱されたことで、地域を離れる住民が出たり、外国人に対する排他的な感情につながったりするケースも見られます。
SNSのデータを解析
オーバーツーリズムによる地域住民と観光客の関係悪化を解決するために、ビッグデータを解析する研究が行われています。Twitterを主な対象とし、「旅」「観光」といったキーワードが入った「ツイート」を抜き出して、「誰が」「誰と」「どこで」といった文章構造をもとにその内容を解析していきます。オーバーツーリズムの問題解決に生かすために、観光や旅に対してポジティブに表現したツイートを解析したところ、「交流」「共同」「一緒に」「参加」といった言葉が多く含まれていることがわかりました。
共創の価値
マーケティングの分野では、提供者から受益者にモノではなくサービスが提供されることで市場が成立するという考え方を「SDL」と呼びます。SDLの理論を観光にあてはめると「観光とは観光業者または地域住民から、観光客にサービスが提供」されます。しかし分析からは、業者や住民から与えられるサービスではなく、観光客も参加して何かをつくり、体験するようなサービスのあり方が好意的に受け止められていることがわかります。こうした地域住民と観光客による「共創」は、観光サービスの価値をさらに向上させ、互いの間に存在する溝を埋めるカギとなる可能性があるのです。結果として持続的な観光が出来上がると考えられます。
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東海大学 国際文化学部 国際コミュニケーション学科 助教 李 昭知 先生
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