タイ少数民族の生き方に学ぶ! 「脱・絆中毒」の知恵
つながることは良いこと?
東日本大震災以来、日本社会には「絆(きずな)」という言葉があふれるようになりました。ビジネスの分野でも政治の分野でも、至る所に「絆」が躍っています。
しかし「絆」には、「ほだし(自由の束縛)」という読み方もあります。つながりすぎることで、相手の自由を束縛したり、逆に相手に依存して自分の自由を制限してしまうことを意味します。例えば毎日SNSをのぞいて「いいね!」の数に一喜一憂したりする人がいます。そしてなかには相手からの返信を過度に要求したり、逆に相手への返信に強迫観念を覚えたりする人がいます。誰かとつながることは大切です。ただ、つながりを求めすぎる社会は果たして健全でしょうか。
少数民族ムラブリの「つながりすぎない」生き方
タイには「ムラブリ」という少数民族が暮らしています。彼らには人間関係を適度に維持する知恵があります。例えば彼らはよく「お前次第だ」と口にします。一見すると相手を突き放した冷たい態度に見えるかもしれません。しかしこれは、「自分で考えて自分で決めなさい」という、相手の意思を尊重し、お互いに適切な距離を保つためのコミュニケーション術です。異なる文化に生きる人たちの暮らしや考え方に触れることで、現代日本人のより健全な社会のあり方や他者との関係性を見つめ直すことができます。
フィールドワークを通して他者と自己を理解する
文化人類学は、他者理解の学問です。現地に足を運び、そこに暮らす人びとと寝食をともにすることで、他者が生きる世界を内側から理解しようとします。そして文化人類学は、自己理解の学問でもあります。例えばムラブリの人たちのつながり方を理解し、彼らの視点から私たちを見つめ直すと、私たちが過度につながりを求めていること、それがお互いの自由を束縛するような殺ばつとした社会を作り出していることが見えてきます。他者を理解し、自己を理解する。そして人間はこれからどのように生きていくのかを探っていく。それが、文化人類学という学問です。
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