国際社会における「国際法」の可能性とは
バランスが重要な国際法
コロナ禍でのWHOによる緊急事態の宣言、気候変動対策での1.5℃目標、さらに2030年までのSDGs(持続可能な開発目標)の実現、あなたがよく耳にするこれらの課題は国際法と関わりをもっています。国際法は国家と国家の関係を規律するルールですが、その内容は国家代表による交渉を経て、国家の合意をもって成立します。国家は、合意された国際法の内容を、立法、行政、司法を通じて実現する義務を負います。すべての国が国際法を守るのが理想ですが、国内法のような強制力は、国際法にはありません。よって、各国が納得するルールをいかに構築するか、ルールは守るべきという規範意識と、国際法を守ることによって利益が生まれるという状況をいかにつくっていくかが、重要になります。
国家に対するルールだけではない国際法の意義
例えば、人権や労働、環境などに関する多数国間条約のなかには、条約の内容がその分野の「国際的に認められた基準」とされるものもあります。そして「国際的に認められた基準」として、国家以外のアクターが行動する際の基準に用いられる場合があります。例えば、企業活動が国境を越えて展開される現在、人権や労働、環境などの「国際的に認められた基準」を尊重することが、企業の社会的責任となっています。
国際的な基準を尊重する企業の社会的責任
ある国で、軍隊が政権を掌握し、多くの市民の人権が侵害されている場合を考えてみましょう。政権による人権侵害は、国内法上はもちろん、国際人権法に基づいて評価されます。国際連合をはじめとする国際社会が政権の行為が国際人権法に違反する重大な人権侵害であると判断した場合、国家の義務違反はもちろん、この国でビジネスをする企業にも社会的責任が問われることもあります。「国際的に認められた人権基準」に反する国・地域の状況のなかで、人権を尊重するビジネス活動をどのように展開するのか、企業は市民社会からはもちろん、消費者、投資家、労働者、さらには自国政府から社会的責任が求められます。
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先生情報 / 大学情報
大阪経済法科大学 国際学部 国際学科 教授 菅原 絵美 先生
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