なぜ国際社会で武力紛争が止められないのか 国際法の課題

なぜ国際社会で武力紛争が止められないのか 国際法の課題

武力紛争は、なぜ止められない?

世界各地で武力衝突が起こり、兵士以外の人(文民)にも多大な犠牲が出ています。国際社会はなぜそれを止められないのでしょうか。国際社会では、主に国家間の関係の在り方を定めた「国際法」があり、それにのっとって停戦に導くことができるはずです。ところが国際法は国家が自らの利益に基づき作るものであるため、国家が認めない限り国家でない存在(非国家主体)との間には適用されません。さらに、国家が非国家主体と何らかの取決めをしても、対等な立場で同じルールに縛られることを嫌います。こうした理由から、例えばイスラエルがハマス(ガザ地区を実効支配する非国家主体)と有効な停戦合意に達するのは難しいのです。

国際人道法は、なぜ守られにくいか?

国際人道法は、武力紛争において交戦者の行為を制約し犠牲者を保護するルールの体系です。ところが国家間の武力紛争(戦争)と異なり国家と非国家主体間の武力紛争では、兵士相互の正当な戦闘という対等な交戦関係が認められないため、非国家主体の兵士はルールに従って戦う動機を持ちにくいです。そのため、国家に比べ劣勢である彼らは文民に紛れて奇襲攻撃を行い、文民の被害が大きくなる一因になっています。また近年、国家は武力紛争時にも人権を保護すべきとの考え方が有力ですが、人権が国際人道法の基盤である軍事的必要性と人道的考慮のバランスを崩すと、かえってルールが守られなくなります。

AI兵器は、人道的に許されるのか?

自国兵士の人権保護のためとして国家は、遠隔操作できるドローンや人間が関与せずとも作動するAI兵器を代わりに用いることでしょう。しかし、AI兵器の攻撃対象になる側の兵士や文民にとってはどうでしょうか? 高性能のAI兵器だからといって文民の巻き添え被害が常に減少するという保障はありません。敵兵士であってもその生死の決定を機械に委ねることは法的にも倫理的にも許されないとの見解があります。これらは国際人道法にとって未知の問題で、明確な答えは未だ出ていません。

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宮崎公立大学 人文学部 国際文化学科 国際政治専攻 准教授 田村 恵理子 先生

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国際法、国際人道法

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メッセージ

私は親の仕事で、毎年アメリカに行く機会がありました。そのときはカルチャーショックや怖い思いをして嫌だったのですが、今思うと視野を広げる良い体験だったと思います。海外のことならSNSでも見聞できますが、SNSはその人が見たい情報だけを見る限られた世界です。やはり現地に行って体験するのとはまるで違います。だからあなたも機会があればできるだけ日本を出て、自分の目で世界を見てください。その場合、海外生活はタフなので、まずは体力、そして自立心を鍛えることも忘れないでください。

宮崎公立大学に関心を持ったあなたは

本学は教養教育中心の小規模大学で、日本の国公立大学の中で数少ない本格的なリベラル・アーツ大学です。個別的な分野を狭く研究するのではなく、自由な精神で学問の本質を研究し、専攻分野に縛られず幅広く学ぶことで、専門性に裏付けられた総合力が発揮できる人間性豊かな人材育成を目標としています。「少人数教育」「活発な国際交流(海外留学)」「充実した就職支援」等が主な特徴で、小規模を活かしためんどうみの良さで、教職員が学生一人ひとりをしっかりとサポートします。