国際理解を深めるための日系アメリカ人研究

国際理解を深めるための日系アメリカ人研究

敵国だった日本とアメリカ、収容所での体験調査

第二次世界大戦時、アメリカ本土にあった日系人強制収容所は、アメリカの負の遺産と言われます。そこでの体験を世代間にわたって聞き取り調査する研究は、歴史的記憶を記録に残す意義と、世代を経て日系移民のアイデンティティがどう変化したかを明らかにしていくものでもあります。アメリカに10カ所あった日系アメリカ人の強制収容所で最大規模の施設はカリフォルニア州の「ツールレイク」で、最大1万8000人が敵性外国人として収容されました。

日系アメリカ人、エスニシティの葛藤と変化

移民国家アメリカの中心は白人層でほかの人々はエスニック・マイノリティだ、という考え方は根強く残っています。また、1980年代のアメリカでは、カナダなどで先行した多文化主義導入への反対が多く、議論が巻き起こりました。人口の0.3%に満たない日系アメリカ人が、アメリカでは教科書に載っています。ヨーロッパ戦線で兵士として活躍したことで、エスニック・マイノリティの、善良なモデルとされたのです。しかし、事実はそれほど単純ではありません。収容所の人々を何世代にもわたって研究していくと、日系アメリカ人が2国間(以上の場合も)の「エスニシティ」で葛藤し、さらに変化してきたことが見えてきます。エスニシティとは、言語や文化など、自分が何者でどこに帰属するのかというアイデンティティの共有を意味する用語です。

国際理解は文化の違いに気づき、認めることから

多文化主義の考え方は、それぞれの文化を対等なものと見ます。文化とは、生きていくために必要な習慣全般だとすれば、目に見える文化だけが重要ではありません。その下には、ジェンダーの価値観など、見えない文化が必ずあり、それらを理解していくことが、異文化理解なのです。
日本も国際化が進むなか、若い人々が、異文化の人と接して、違いにまず気づき、カルチャーショックに適応していくことが、国際理解への最も重要な一歩だと言えます。

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大阪経済法科大学 国際学部  准教授 本多 善 先生

大阪経済法科大学 国際学部 准教授 本多 善 先生

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国際社会学

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メッセージ

高校では英語をしっかり勉強しましょう。言語を学ぶということは、文化を学ぶということです。言語をツールとして、異文化理解と多文化共生を志すことができます。他者との対話も重要です。まず、相手の意図をくみ取ろうとする経験を通じ、新たな価値観などを習得してください。そうすると、人それぞれが違うことに気づきます。留学に限らず、友人でも良いので、人と深く関わることを通じて、他者を理解していく経験をしましょう。専門的なことは大学でいくらでも学べます。異なる存在を理解することが国際理解につながると考えています。

先生への質問

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大阪経済法科大学では、学生一人ひとりが目標や進路に応じて経済学・法学の専門知識を体系的・効率的に学ぶことができるよう、コース制を導入。また、他学部科目を最大30単位認定する「経法相互乗り入れ」を実施。経済と法律を組み合わせて学ぶことが可能。さらに難関試験に向けた四年間一貫指導を行う「Sコース」(受講料無料)や、多彩な「資格講座」などを開講。こうした教育システムを活用して、有名・優良企業をはじめ、法科大学院・公務員など多彩な分野に合格者を輩出しています。