国際人権法と、各国の伝統・文化や民主主義は両立するのか?
「国際法」と「国際人権法」ってなに?
国家間の問題を解決するために作られた「国際法」には、戦争を禁止したり、領海や排他的経済水域の幅を決めたり、その他、外交、経済、環境といった分野ごとに様々なものがあります。歴史や公民で習う、「日米修好通商条約」や、「国際連合憲章」、「WTO協定」などがこれにあたります。
また、「国際人権法」は、国際法の一分野で、個人の人権を守ることを目的としています。具体的には、「自由権規約」「社会権規約」「女性差別撤廃条約」「拷問等禁止条約」など、様々な人権条約があり、多いものだと190以上の国が参加しています。
国際人権法は私たちの社会にどんな影響を与える?
国際人権法は、拷問などの悪質な人権侵害を禁止するだけでなく、様々な社会問題にも関わっています。例えば、敬虔なカトリック教徒の多いアイルランドでは、人工妊娠中絶が厳しく規制されていました。しかし、自由権規約委員会がそうした制度を女性の人権侵害と批判したことが後押しとなり、2018年の国民投票の結果、中絶の規制が緩和されました。また、コスタリカでは、米州人権裁判所の勧告的意見を受けて、2020年から同性婚が可能になりました。
日本では、結婚すると夫と妻どちらかの姓に合わせなければならず、95%以上の夫婦では妻が姓を変えています。しかし、このことが実質的な女性差別に当たるとして女性差別撤廃委員会から法改正の勧告を受けています。
国際人権法が影響力を持ちすぎると問題に?
国際人権法が国内社会に与える影響は年々増大しており、それは、人権保障の観点からは良いことだといえます。しかし、国内法というのは、その国の伝統的価値観や文化、特有のニーズを反映しており、民主的国家では、民主的な議論の結果でもあります。それを国際人権法が変えさせることは「価値観の押し付けではないか」、と問題視する声もあります。このことから、国際人権法の研究においては、「国際人権法の実効性と正統性の両立」をどのように達成するかが重要となるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。