環境保護と開発がせめぎ合う北極域をめぐる国際関係

環境保護と開発がせめぎ合う北極域をめぐる国際関係

北極圏を取り巻く国際環境

北極点の周辺は北極域と呼ばれます。北極圏(北緯66度33分以北)に領土をもつアメリカ、カナダ、デンマーク(グリーンランド)、ノルウェー、ロシア、フィンランド、アイスランド、スウェーデンの計8か国によって、「北極評議会」が1996年に設立され、北極の環境保護や持続可能な開発などの国際協力が進められています。2000年代に地球温暖化によって北極海の夏の海氷面積が大きく縮小したことで、従来見られなかったような経済活動への期待が集まりました。

北極評議会の重要性と独自性

夏の海氷面積が減少したことにより、欧州とアジアを結ぶ近道として北極海の航路利用や天然ガスやレア・アースなどの資源開発への機運が高まりました。しかし、新たな経済活動によって環境汚染が生じ、北極圏に住む人々や生態系に悪影響を及ぼすのではないかという懸念も根強くあります。ただし、国連海洋法条約が北極海にも適用されているため、国や企業が海洋資源を無制限に開発することはできません。北極評議会は、環境保護と持続可能な開発の間でバランスをとるための国際的な協議の場でもあります。加盟国の間では、北極域は環境負荷に極めて脆弱であるため、通常の国際関係にみられるパワー・ポリティクスから一線を画した特別な場所として例外的な対応をしなくてはならいという「北極例外主義」と呼ばれる姿勢がみられてきました。

国際秩序の揺らぎのなかで

北極評議会の議長国をロシアが現在務めていますが、ロシア以外の北極7か国は、ロシア代表が出席する会合には同席できないとして、条件が整うまでボイコットすることを表明しました。これは、北極評議会が始まって以来の出来事で、冷戦後、25年以上にわたり積み上げられてきた平和で安定した北極域の国際関係の危機だといえます。地球温暖化への国際社会の一致した対応が待ったなしの状況の中で北極域をめぐる国際関係についての学術研究はより一層重要な社会的役割を担っているといえます。

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先生情報 / 大学情報

北海道大学 北極域研究センター  准教授 大西 富士夫 先生

北海道大学 北極域研究センター 准教授 大西 富士夫 先生

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国際政治学、地域研究

先生が目指すSDGs

メッセージ

北極圏といえば、「思い浮かぶのはシロクマぐらい」「遠くて自分には関係なさそう」と思うかもしれません。とはいえ、エビやサーモンなど、北極圏の海産物が輸入されて食卓にのぼったり、北極圏の資源開発がモノの値段や電気代に影響したりと、北極圏と私たちの生活との結びつきは意外と多いのです。そして地球上の全ての人に関係する、気候変動の影響を大きく受けているのが北極圏です。北極圏で起きていることに関心を持ち、自分ごととして考えて行動することで、あなたの世界は確実に広がります。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

北海道大学に関心を持ったあなたは

北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。