動画に映り込んだ不要なものを簡単に消す技術とは

動画に映り込んだ不要なものを簡単に消す技術とは

多用されるコンピュータグラフィックス

近年映画やゲームなどの映像の大半はコンピュータグラフィックスを使って編集されています。これらの編集技術は目覚ましい勢いで進化しており、専門家でしかできなかった複雑な編集がアプリやオンラインソフトを使って誰でも簡単にできるようになってきました。

不要なものを動画から消す

動画を撮っていると人や物体などの望まないものが映り込むことがあります。それらを消すには、これまでは一コマずつ手作業で画像処理しなければならず、膨大な時間がかかっていました。そこで消したい対象物をおおまかにマークするだけで、コンピュータが自動的に消してくれるプログラムが作られました。
対象物、例えば歩く人をマークすると、コンピュータはその対象物の動きの情報(速度場)を求め、それを頼りに動画内を追跡します。そして追跡された対象物は動画から切り取られます。
切り取られた箇所には対象物によって隠れていた背景の画像を作ってはめ込みます。対象物が動いていれば、その前後には対象物に隠れていた(もしくはこれから隠れる)部分が必ず見えているので、それを自動的に見つけてはめ込むのです。ただしカメラ自体が動いていると背景の角度などが変わるため、そのままはめ込もうとしてもぴったり合いません。そこで、カメラの動きによる背景のゆがみを自動的に補正する機能を加えています。

技術の進歩が創造性を高める

現在までに開発したプログラムでは、対象物を動画の最後まで正しく追跡しきれないことがあり、途中で何回か対象物を指定し直す必要があります。この課題解決のために、AIの機能を組み込んで対象物を学習させることで、最後まで自動で完璧に追跡しきれるような方法が模索されています。
このような技術はGPUの発展により可能となりました。GPUはもともと3Dグラフィックスの描画のために開発された並列計算機ですが、その汎用化にともない今までより格段にコンピュータの計算能力が上がりました。技術の進歩は、人々の創造性を自由に羽ばたかせてくれるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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静岡大学 工学部 数理システム工学科 准教授 岡部 誠 先生

静岡大学 工学部 数理システム工学科 准教授 岡部 誠 先生

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数理システム工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

コンピュータや人工知能というと、人間に代わって何でも自動でやってくれる、というイメージをお持ちかもしれませんが、実はそうではなく、これらはむしろ私たち人間が自分たちのアイデアを具体化するために使う「道具」です。今までは専門的な知識や技術のある人にしかできなかったことを、誰でも簡単に楽しめるようになる、そんな可能性を秘めています。
私は動画から不要なものを消したり、風景画の中の水や炎を動かして見せたりするようなソフトを開発しています。あなたも興味があるなら、ぜひ一緒に学びましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

静岡大学に関心を持ったあなたは

静岡大学は、7学部を擁する総合大学のメリットを生かし、学生の知的探究心に応えることができる幅広い学問領域の教育を実施しています。大学の理念は「自由啓発・未来創成」であり、これは自由によってこそ自己啓発を可能にし、それを通じて、平和かつ幸福な未来を創り出すとの力強い思いを表明しています。
失敗を恐れず若々しいチャレンジ精神をもち、人の意見によく耳を傾け、それに学び、協調性豊かに自己主張ができる人の入学を期待します。