見えない地下の水の流れを、数学を使って推測する
見えない地下の流れを探る
「地熱発電」は、地下の熱水や蒸気を取り出し、タービンを回して発電をします。発電に利用した水をもう一度地下に戻して地下の圧力や水の量を維持できれば、そのフィールドを持続的に利用できます。ただし、発電に利用した水は冷めてしまっているので、戻す場所は慎重に選ばなければなりません。そのため、地下を流れる熱水がどこをどのように流れているのかを推測する必要があります。地下に掘った井戸から染料などを流す「トレーサー試験」は、水の流れを直接調べることができます(川に笹舟を流すことで水の流れがわかるのと同じ要領です)。この計測結果をうまく活かすことができれば、見えない地面でも地下の構造や流れを予測できると考えられています。
水の流路を「穴」として表した数理モデルを構築
岩石内の水の流れ方を数式で表すことができれば、今だけでなく、未来にどんなことが起きるか予測することができます。ただし、複雑な岩の構造を全て表しながら、流れを把握しようとしても限界があります。そこで、水が流れるルートを連結した「穴」として捉えれば、「穴」を評価する数学の「トポロジー」の理論に基づいて、水の流れ方をシンプルに評価できます。3Dプリンタで作った岩石構造に水を流す流体流動実験や、複雑な数値シミュレーションも行いながら、より本質的な流れを表す数式の探索が行われています。
技術だけでなく、持続的な社会のために
科学技術を発展させれば、世の中は良くなるのでしょうか? 火山国である日本では、温泉として古くから地熱利用が行われており、現在は発電や暖房などに使われています。多様な使い道があるため、技術を発展させるだけでなく、多くの人が納得の行くような持続的な資源の使い道や地域づくりを考えることも大切です。資源利用について価値観の異なる人同士でも、互いに理解し合い、共に新たな価値を創っていくことができる効果的な方法が検討されています。
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先生情報 / 大学情報
東北大学 工学部 機械知能・航空工学科(流体科学研究所) 准教授 鈴木 杏奈 先生
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