いろいろな現象を数式で表すと、過去や未来が見えてくる
データや数式を使って現象を表現する
数学の勉強をしているとき、これがなんの役に立つのだろうと疑問に感じたことがあるかもしれません。実は、数学は、社会のさまざまなところで活用されています。実験や観測では、今現在の状態しかわかりませんが、その現象を数式で表す「数理モデル」を作り、そこに各種の条件を当てはめて計算することによって、将来の予測をしたり、過去の状態がどうであったかを推測したりすることができます。このように、世の中にある各種の現象を数式で表す学問を「数理科学」と言います。
微分方程式で、動物の個体数の推移を予測
例えば、「捕食・被食モデル」という有名な数理モデルがあります。イタリアの数学者ヴォルテラが微分方程式で説明したものです。漁業の例で言うと、サメなどの捕食魚がいなければ、漁をする場所の食用魚は急速に増加します。しかし、サメが増えて食べられてしまうと、食用魚の増加速度は鈍ります。逆に、食用魚がいなければ、それを餌とするサメも減少し、餌が増えればサメの増加速度は上がります。それぞれの魚が生まれてから捕食するようになるまでの期間などの生態や環境要因などを加味して比例関係を考え、サメと食用魚の増える速さを微分方程式で表し、計算すると、個体数の推移が予測できます。この「捕食・被食モデル」はさまざまな動物に当てはめることができ、環境保護、資源保護などに役立っています。
誰にでも一目瞭然の未来予測
このように、ある現象が条件によってどう変わるかという特性を当てはめて数理モデルを作れば、物理、生物、経済など、さまざまな分野で、未来や過去の予測、推測ができます。新型コロナウイルス感染者数の推移を、数式を使って表し、どのような条件でどのくらい増加するか、という予測も可能になります。また、誰にでもわかりやすく数値で物事を予測できることから、政策立案などの際に説得力のあるエビデンス(根拠・証拠)にもなります。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科 准教授 森 直文 先生
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