仲間を増やして強くなる! 口内細菌の巧みな生き残り戦略
細菌同士が「会話」して団結する!
口の中には700種類以上の細菌がいます。人間にとって良い菌も悪い菌もおり、良い菌は、外から入ってこようとする病原菌から私たちの体を守る働きをしてくれています。
悪い菌は酵素やグルカンというネバネバした物質を出しながら集まって「バイオフィルム」という膜を作ります。バイオフィルムの中の菌は一緒になって毒素や悪臭を出せるようになり、虫歯や歯周病を引き起こします。人間が集団になると強くなるように、細菌も集団になると強くなるのです。
このように、細菌などの微生物には化学物質を介してコミュニケーションをとり、みんなで一緒に新たな行動を起こす「クオラムセンシング」の力があることがわかっています。クオラムセンシングは生物としての巧みな生き残り戦略であり、バイオフィルムはその一例です。
バイオフィルムを壊す
これまでの研究でクオラムセンシングやバイオフィルムの仕組みについて多くのことが明らかになり、最近ではバイオフィルムの生成を防ぐ方法が研究されています。例えば、バイオフィルムから放出されるナノサイズの物質「メンブレンベシクル」を、薬剤や光触媒を使って壊す方法が探索されています。その方法を見つけて、虫歯や歯周病を予防する歯みがき粉や歯ブラシの開発に生かすことが研究の大きな目標です。
口は全身の健康のバロメーター
高齢や病気などが原因で免疫力が落ちて口内細菌のバランスがくずれると、良い菌も悪い菌も悪さをするようになり全身に影響を及ぼすことから、口内細菌と全身の病気の関連について多くの研究が行われています。肺炎、糖尿病、心臓病、認知症などさまざまな病気との関連がわかっており、特に高齢者では口内細菌が肺に入りこんで肺炎を引き起こすことが大きな問題です。
口内細菌のバランスを整えるには、歯みがきなどで口の中をキレイに保つ「口腔(こうくう)ケア」が欠かせないため、訪問歯科など、介護を受ける高齢者の口腔ケアをテーマにした研究や活動も増えています。
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先生情報 / 大学情報
日本大学 松戸歯学部 歯学科 教授 泉福 英信 先生
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