食欲をコントロールするためには? GABAと食欲の関係を探る
食欲はどこから生まれる?
食欲は脳と腸が影響しあって生まれています。食事をして満腹になると胃は空腹ホルモンの放出を停止し、腸からはペプチドが出ます。すると脂肪組織からレプチンホルモンが放出され、これが脳に到達することで食欲が収まります。
このように脳が食欲をストップさせるまでのメカニズムは解明されていますが、例えば医療目的で、満腹にならなくても食欲を抑えるためには、食欲を意図的に制御する仕組みを研究する必要があります。
食欲を制御する栄養素
体内で分泌されるホルモンやペプチド以外にも、栄養素が食欲を制御している可能性があります。そのひとつが抑制性神経伝達物質「GABA(ギャバ)」です。マウスにGABAを高濃度で混合した餌を与える実験では、食べる餌の量が普段より減ることが明らかになりました。外部から与えられたGABAが脳に作用して、食欲を抑制していると考えられます。
しかしGABAはもともと脳内にも存在しているため、外部から入ってくるものをすべて取り入れてしまうと、脳内のGABAの量が過剰になってしまいます。脳は血液脳関門というドアを設けており、食べ物から摂取された栄養素を選別しています。このときGABAはシャットアウトされていると研究者の間では信じられてきました。したがって、GABA は脳に直接届いて食欲を制御するのか体のほかの部分に影響するのかまだ分かっていません。
肥満治療のための食欲抑制薬の開発
現在、GABA摂取がどのように食欲をコントロールするのか、研究が進んでいます。GABAの食欲抑制のメカニズムを解明できれば、過食にならないように、生活習慣病予防や肥満治療の開発につながるでしょう。また、肥満だげではなく、てんかんの薬にも応用することが可能です。てんかんの患者は脳内のGABA保有量が低下しているので、GABAを分解する酵素を止めるための薬を摂取します。外部から取り入れたGABAが脳に到達するメカニズムを証明できれば、治療薬の改善につながるのです。
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広島大学 生物生産学部 国際生物生産学プログラム 准教授 Thanutchaporn Kumrungsee 先生
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