がんと共に生きる道がある? 「がん悪液質」を解き明かす
なぜがんで弱くなるのか?
なぜ人は、がんで弱くなるのでしょうか。がんが進行した人は「やせ細った」外見になる人が多くいます。しかし、どのようにやせ細り体力が落ちるのか、その原因は実はよくわかっていません。そこで考えられているのが、がん細胞から何か物質が出ていて、それが全身に悪い影響を及ぼしているのではないかという仮説です。この仮説を解明することが、新たな治療法を見つける鍵となるかもしれません。
がん悪液質とは
「がん悪液質」は、進行のスピードが速い進行がん患者の約80%に見られたという報告もある合併症で、その顕著な症状が食欲不振です。食べられなくなるので体重も筋肉も体力も落ち、そのためよい治療を行っていても中断せざるを得なくなります。では無理にでも食べてもらえばよいかというと、がん悪液質の影響の下では食べてもやせ続けてしまい、回復しません。
そんながん悪液質ですが、完治させる治療法はまだ確立されておらず、原因物質やメカニズムの多くが解明されていません。理由の一つに実験そのものの難しさがあります。胃がんや肺がんなど単体でのがん研究は盛んですが、がん悪液質の場合は健康な臓器も含めた全身の機能が研究対象になるからです。現在、マウスに加えて、遺伝操作のしやすいショウジョウバエでさまざまな実験が試みられています。
がん悪液質をコントロールする
転移による再発などがあり、現在もがんの「根治」は難しいものです。ならば、がんと共存するという考え方も選択肢の一つです。抗がん剤治療が難しい患者でも、がん悪液質さえ抑えられればがんと共存して生きる道はあります。もちろん、がん悪液質を抑えて体力を温存しながら治療に専念するものよいでしょう。選択肢を増やして、将来、がん悪液質をコントロールしながら治療する新たな方法が確立できれば、たとえ進行がんであっても、患者は天寿を全うできるようになるかもしれません。
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