植物の形から進化の秘密に迫る「植物形態学」
植物の形の多様性と普遍性
植物は実に多種多様な形をしています。おもしろい形の葉や花を持つ植物が数多く生息するほか、葉も花もなく岩にへばりついている植物もあります。その多彩さの一方で、植物には多くの種類に共通する普遍的な「形」もあります。根・茎・葉はその1つです。陸上植物は、コケ植物、シダ植物、裸子植物、被子植物に分けられますが、このうち、最も原始的なコケ植物には、根・茎・葉がありません。次に古いのがシダ植物で、ここで初めて植物は根・茎・葉を獲得します。以降、裸子植物や被子植物へと発展していきますが、根・茎・葉は植物の普遍的な形として受け継がれていくのです。
シダ植物「小葉類」の根の形を見る
植物の根・茎・葉はどのように獲得されたのかを解明するために注目されているのが、シダ植物の中でも最も原始的と言われる「小葉類」というグループです。小葉類の仲間で、現代の日本にも生息している「ヒカゲノカズラ」を研究してみると、茎の先から出てくる根が必ず「二又分枝」の形になることがわかりました。これは小葉類に特有の現象です。
一方、根・茎・葉が現れる直前の古代の植物「アグラオフィトン」の化石を調べると、こちらにも「二又分枝」が見つかります。つまり、小葉類は、古代植物の形態を現代まで守り続けている希少なグループであり、根・茎・葉の発生と進化を解明する鍵ではないかと考えられるのです。
成長の仕組みと進化の過程
小葉類を調べる方法は、主に2つです。1つは、根の先端を薄くスライスし、染色して、細胞の構造を観察する方法です。もう1つは、根の中の分裂細胞群(盛んに分裂する細胞)を標識し、蛍光顕微鏡で丹念に観察して、どの部分がどのようなタイミングで分裂し、「二又分枝」を作るのかを追跡する方法です。こうした観察を蓄積することで、根・茎・葉の発生の仕組みや進化の過程がいずれ明らかになるでしょう。このように、植物の「形」に注目して進化の秘密に迫ることが、「植物形態学」という学問のテーマの1つなのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
京都教育大学 教育学部 理学科 准教授 藤浪 理恵子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
植物形態学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?