「まね」も「けんか」も大切な、子どもの世界

「まね」も「けんか」も大切な、子どもの世界

「まね」は、「創造」の始まり?

「表現する」という言葉には、何か表現したいものが心にあって、それを外に出すというイメージがあります。しかし、3~6歳の幼児を観察していると、決してそうではないことがわかります。実際にほかの子が造形表現しているのを見て、まねをするうちに「こうしてみよう」「ああしてみよう」と自分流のアレンジや工夫をして、その子だけの表現が生まれることが多いのです。ですから、周囲の大人が「ほかの子のまねしちゃだめ」と言うのは、子どもの表現を制限していることになります。まねには、創造の種があるからです。

関係性の中で表現し、育つ子ども

人は何かを表現すると他人に見せたくなりますが、子どもも同じです。最初は大人に「見て、こんなの作ったよ」と語りかけて、「いいの作ったね」と承認してもらおうとします。それがやがて、周囲の友だちに「これで一緒に作らない?」と交渉したり、「こう作ればいいの?」と確認したり、相手と同じものを作って遊びへの参加表明をしたりするようになるのです。
そのようにして友だちとの関係が深まると、時にはけんかをしますが、けんかは関係ができている証拠です。けんかができるようになった子どもたちは、なんでも友だちと一緒がいいと思うのではなく、自分の意見や気持ちを主張するようになります。子どもは一人で育つのではなく、大勢がいる中で、関係性を深め、刺激を受け合い、学び合っていることが見て取れます。

言葉以外で会話する子どもの世界

子どもは言葉以外に、まなざし・身ぶり・手ぶり・表情・立ち位置などを使って、互いに会話しているようなところがあります。また、造形表現をする時、材料になる物の「声」をよく聴いています。粘土を触ったりこねたりしながら、粘土と対話し、こんな動きをするんだと物の特性を知っていくのです。そのような、大人とは違う感性が子どもにはあります。保育では、子どもの表現したいもの、子どもの世界観を大切に見守っていきたいものです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

京都教育大学 教育学部 幼児教育科 准教授 佐川 早季子 先生

京都教育大学 教育学部 幼児教育科 准教授 佐川 早季子 先生

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幼児心理学、保育学、発達心理学

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メッセージ

子どもは、誰かのまねをしながら成長していきます。あなたも「素敵だな」「いいな」と思う人がいたら、その人のまねをしてみると自分らしさが自然に見えてくると思います。
また、保育者をめざすなら、「これをしちゃだめ」とか、「こうしなきゃいけない」とか考えずに、すべてを忘れて子どもの頃に戻って遊んだり、子どもと一緒に遊んだりする経験もしてみてください。心にふたをせずに「楽しい」「きれい」と心を動かす体験が、子どもの心に近づくことになり、子どもの表現に関わる時に生かされるはずです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

京都教育大学に関心を持ったあなたは

京都教育大学は、優れた教員を養成するため、教科と教職に関する知識と技能、それらを基盤として教育実践のさまざまな課題に対処するための思考力・判断力・表現力などの能力を育成し、教育の現場において主体的に仲間と協働して課題を解決しようとする態度を養います。このような教育と学生一人ひとりへのきめ細かい指導を通して、子どもの成長する過程に関わることに大きな喜びを感じ、人間の成長と社会の発展における教育の役割を理解して、自ら研鑽を続ける教員を養成します。