微生物の大きな力! 根粒菌活用でダイズやアズキの生産量をアップ

微生物の大きな力! 根粒菌活用でダイズやアズキの生産量をアップ

根粒菌とマメ科植物との共生関係

「根粒菌」は土壌に生息する微生物(細菌)で、マメ科の植物に感染して「根粒」というこぶのような器官を植物の根に作ります。根粒菌が空気中の窒素をアンモニアに変換(窒素固定)して宿主のマメ科植物に供給する一方で、宿主は根粒菌に栄養分を分け与え、お互いに利益のある共生関係を築きます。
窒素は作物の生育や収穫量に影響する栄養素であるため、根粒菌をうまく利用して、ダイズやアズキの生産性を向上させる研究が行われています。

優秀な根粒菌を高い割合で感染させる

根粒菌にはさまざまな種類があり、それぞれが感染しやすいマメ科植物も異なりますが、とくにダイズについては、USDA110という根粒菌が高い窒素固定能を持つことが知られています。そこで、USDA110の菌液をダイズの種にかけて(接種)、USDA110と相性の良いダイズの品種や、感染しやすい土壌環境が調べられています。
環境については、土壌が乾燥しているほど、USDA110よりもほかの根粒菌が高い割合で感染してしまうことがわかりました。マメ科植物は、根粒菌との共生に際し、イソフラボンなどのフラボノイド化合物を分泌して根粒菌を呼び寄せます。乾燥などストレスのある環境では、分泌するフラボノイド化合物の種類や分泌量を変えて、その環境に適した根粒菌を呼び寄せている可能性があります。

生態学の観点からも実用化を検証

根粒菌の生態についても研究が進められています。日本国内のいろいろな地域の土壌を採取してアズキを栽培してみたところ、アズキに優先的に感染する根粒菌の種類は、北から南へいくにつれて変化する傾向にありました。
栽培実験においては、有用菌株の接種によるダイズやアズキの生産性向上は一定の成果が得られていますが、実際の農地では、もともと生息している土着の根粒菌との競合などで思い通りの結果が出ていません。そのため、根粒菌の生態や地域に土着する根粒菌の特徴なども考え合わせた上での、栽培技術の実用化が目標とされています。

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先生情報 / 大学情報

島根大学 生物資源科学部 農林生産学科 助教 城 惣吉 先生

島根大学生物資源科学部 農林生産学科 助教城 惣吉 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

土壌微生物学、植物栄養学、環境農学

先生が目指すSDGs

メッセージ

 私が研究している根粒菌のほかにも、例えばイネ科の植物内部に共生して窒素固定するエンドファイトなど、農業に貢献する微生物はたくさんいます。また、いま実際に分離培養できる微生物は、土の中に何万種類といる微生物の中のたった1%程度です。残りの99%の中にも農業に役立つ力を秘めた微生物が多くいるに違いありません。例えば、ある微生物が分泌する物質が別の微生物が増えるために必要であるといった新しい知見で培養技術も進歩しています。微生物の持つさまざまな可能性に興味を持ってもらえると嬉しいです。

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島根大学は、学術の中心として深く真理を探究し、専門の学芸を教授研究するとともに、教育・研究・医療及び社会貢献を通じて、自然と共生する豊かな社会の発展に努めています。とりわけ、世界的視野を持って、平和な国際社会の発展と社会進歩のために奉仕する人材を養成することを使命とします。この使命を実現するため、知と文化の拠点として培った伝統と精神を重んじ、「地域に根ざし、地域社会から世界に発信する個性輝く大学」を目指すとともに、学生・教職員の協同のもと、学生が育ち、学生とともに育つ大学づくりを推進しています。