ナノ粒子を使ったがん治療薬の研究を、「再生医療」の分野にも応用

ナノ粒子を使ったがん治療薬の研究を、「再生医療」の分野にも応用

再生医療にともなう「がんの芽」細胞の危険性

iPS細胞の研究がノーベル賞を受賞したのを機に、世界中で再生医療の研究が盛んになってきました。ただ、細胞を増殖させて臓器を作る過程で、「がん細胞」が生まれる危険性が懸念されています。
がん細胞と聞くと、恐ろしい細胞が突然生まれてくるイメージを持つかもしれませんが、実は私たちの体の中では、「がんの芽」と言うべき細胞がほぼ毎日のように作られています。ほとんどの芽は、免疫機能によって摘み取られているのですが、細胞分裂の過程でがん化の危険性がある細胞が発生するのは、避けようのない現象なのです。

カギはリン脂質のナノ粒子

せっかく新しい臓器を再生しても、そこからがんが発生しては元も子もありません。そこで現在、細胞を増殖させる段階でがんの芽を探し出し、本物のがん細胞になる前に消滅させてしまう研究が進んでいます。芽を探し出してくれるのは、リン脂質などから作られた「ナノ粒子」です。
これまでの研究で、がん細胞は正常細胞と比較して細胞膜の構造が乱れているため、ナノ粒子を吸着しやすいこと、ナノ粒子が集積したがん細胞は、内部で細胞死のシグナル伝達が発生し、自ら死滅することなどがわかっています。この仕組みを使ったがん治療薬の臨床実験が行われていますが、それを再生医療の分野にも応用しようというわけです。

がんの危険性が極めて低い安全な臓器再生

現在、肝臓細胞に分化させるための幹細胞とナノ粒子を使って、増殖中の細胞の中からがん化するかもしれない細胞をスクリーニングし、細胞死させる研究が進められています。肝がんは、細胞の性質が大腸がんや肺がんなどと似ているので、肝臓の細胞で技術が確立できれば、そのほかの臓器細胞の再生にも応用できるでしょう。
特定の臓器細胞になる前の未分化細胞、つまりiPS細胞の段階からスクリーニングが可能になれば、がん化する可能性が極めて低い、いわば保証付きの臓器再生が行えるようになるかもしれません。

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崇城大学 生物生命学部 生物生命学科 准教授 古水 雄志 先生

崇城大学 生物生命学部 生物生命学科 准教授 古水 雄志 先生

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生体医工学、生命科学、再生医療学

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何か疑問に感じることがあったらすぐに調べるよう心がけていますか? ネットなり書物なりで新しい情報を手に入れたら、その情報を別のことにも応用しようと考えていますか?
私の専門である生体医工学もそうですが、近年の大学での研究の多くは、さまざまな学問分野の知識や情報を横断的に活用し、研究の幅を広げています。これから大学をめざすあなたにも、情報を活用する力が求められているのです。失敗を恐れずぶつかる気持ちと、情報を駆使して学びを深める気持ちを持って大学に来てください。

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崇城(そうじょう)大学は薬学、生物生命、工学、情報、芸術の5学部からなる総合大学です。“世界で活躍できるプロフェッショナルの育成”を目指し、最先端の施設・設備・研究を備え、学生一人ひとりを厳しく育てる実践的な教育プログラムにより、高い就職率や国家資格合格率を維持しています。理系私立大学では全国初の英語を公用語とする学習施設「SILC(シルク)」があり、英語ネイティブ講師による英語教育が成果を上げています。本学の地である熊本から産業界の未来を切り拓く若者を輩出する学舎でありたいと決意しています。