雑草から布を作る! 未利用資源を活用したテキスタイル
雑草が布の材料に!
身の回りには「布」で作られたさまざまな製品があります。この、布などの織物に注目した分野は「テキスタイル」といい、扱い方や作り方などの研究が行われています。例えば雑草から布を作る取り組みです。
葛(くず)という植物から作った布は、江戸時代にはかまや雨がっぱなどの材料として使われていました。現在も壁紙などに利用されているものの、江戸時代に比べると需要は減っています。葛は日本各地に分布していますが、繁殖力が非常に強い厄介な雑草です。こうした未利用資源を、伝統的な手法に立ち返ってテキスタイルの材料にすれば、環境保護に貢献できると期待されています。
捨てられているバナナの茎
バナナから布を作る研究も行われました。食用のバナナを収穫したあとに残る茎は、農業廃棄物として捨てられています。この茎の中にある繊維を抽出して糸や紙の材料にすれば、資源の有効活用や新たな産業創出につながります。このときヒントとなったのが、同じくバナナを使う沖縄県の「芭蕉布(ばしょうふ)」です。伝統的な布で張りが強いため、沖縄のような高温多湿の地域でもパリッとした着心地を保てます。
食用バナナから布を作る
ただし芭蕉布にはイトバショウという、布の材料に適した種類のバナナが使われています。一方で、食用のバナナはミバショウという別の種類で、質が異なるため単体では丈夫な布にならないことがわかりました。それでも麻や綿と組み合わせるとしなやかで丈夫な布を作れるため、テキスタイルの材料としての価値は十分あると言えます。また、バナナの繊維と福井県の越前和紙の手すき技法を組み合わせれば、紙の材料としても使えることがわかりました。バナナの繊維だけでも、なめらかな質感で印刷も可能な紙が作れます。
このように伝統的な手法と未利用資源を使って作られた繊維素材は社会に対してどのようなメッセージ性を伝えられるのか、また、それが芸術に使われると作品にどう影響を与えるのかも、研究が行われています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
多摩美術大学 美術学部 生産デザイン学科 テキスタイルデザイン専攻 教授 柏木 弘 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
美学、芸術学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?