多くの生物による無償のサービスで生かされている人間
地球は生物の力で現在の姿になった
地球は、太古の昔から今のような状態だったわけではありません。46億年前に誕生してから現在までのその半分以上の時間、大気に酸素はほとんどありませんでした。酸素のない地球で生物は誕生し、ゆっくりと進化していき、やがて光合成するバクテリアが登場して次第に酸素が作られていきます。大気に酸素があふれ、それが上空でオゾン層を作ってはじめて、生物は陸上に進出することが可能になりました。今のこの地球環境は、生物が作ったものなのです。
人知れずサービスを提供する生物たち
森の木々は、大気中の二酸化炭素を吸収してたくわえ、葉から水蒸気を出して気温を下げるとともに雲を作り、落ち葉の層は雨水をたくわえ川や海に栄養を供給し、落ち葉は大地を肥沃(ひよく)にします。その落ち葉を分解しているのは、ミミズをはじめ無数の小さな動物たち、さらに膨大な数のカビやバクテリアです。水辺では、小さな植物プランクトンやヨシやマングローブなどの植物が水中のリンやチッ素を除去し、貝やエビ・カニ、泥の中のさまざまな生物たちが、流れてくる有機物を食べて処理しています。そのおかげで水はきれいになり、鳥や魚はエサを求めて集まってきます。森も水辺も、無数の生物からなる生態系が私たちにさまざまな恩恵を提供してくれているのです。
生物の力なしに人間は生きられない
人間は、食糧はもちろん、あらゆる生活物資を生物から得ています。それだけでなく、空気も水も土も、生物の力なしには維持できません。経済も文化も、あるいは精神面でも、多くの生物に依存しています。生物なしでは生きられないにもかかわらず、私たちはいま猛烈なスピードであらゆる生物を絶滅の淵に追いやっています。生物の生息地を破壊し、乱獲し、外来種を拡げ、そこにさらに温暖化が迫ります。絶滅した生物は、二度と戻ることはありません。ほかの生物たちのためでも地球のためでもなく、人間自身の生存のために今すぐ生物の減少を食い止めなければならないのです。
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