自分のメディア体験をとらえ、‘驚ける’力を育てよう
メディア体験と面白さ
新聞の見出しで「交際相手の息子投げる」とあれば、私たちは幼い被害者への虐待を瞬時にイメージするでしょう。本当はほかにも可能性があるのに、なぜか私たちの多くはメディア内容を当たり前のように一定の解釈に基づいて理解します。日常生活では、メディアの「面白さ」にも当たり前になっていることがあります。現代社会のメディア文化を代表する「ゲーム」を例に考えてみましょう。
その面白さは、画面上のこととの操作的なつながり、キャラクターへの感情移入やストーリー解釈という物語的なつながり、ネット上やリアルでの共有的なつながりによって生まれます。メディア体験にはこうした「つながり」による面白さがあり、私たちはそれを当たり前のものとしています。
つながりが断ち切られるメディア体験
ところが、「つながりが断ち切られる」メディア体験もあります。例えばゲームには、バグによる画像表示・音声の不具合があります。突然、バグ現象が奇妙なビープ音とともに画面いっぱいに出てきたら、操作も物語もとんでしまい、ショックと怖さを感じます。実はこうした現象をわざと生かしたゲーム作品があります。楽しさとは程遠いはずのこうしたメディア体験が、「面白さの元」になってもいるのです。現代ではつながりを楽しむメディア文化が社会的に拡大し、当たり前になりました。だからこそ、つながりが断ち切られるメディア体験に新しい刺激を感じ、面白がるという人々も現れるのです。
‘驚ける’力を育てる社会学
社会学という学問は、当たり前を揺るがす現象に‘驚ける’力を育てます。そしてそこから新しい問いを見出します。あなたが経験するさまざまなメディア体験は個人的な体験ですが、そこにはその体験を可能にした社会的な土台が必ずあります。そこで「この土台とは何か」「どういう人々が関わっているのか」「いつ成立したのか」といった問いが見えてきます。どんなケースでも、メディア体験の社会的背景を考えることは可能なのです。
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先生情報 / 大学情報
京都産業大学 現代社会学部 現代社会学科 教授 鍵本 優 先生
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