技術や経済面だけではない世界の食料問題:人間らしさの難しさ
「食べる」のピンとこない影響力
あなたは、昨晩の夕飯の食材がどこから来たか知っていますか? また、それらを作るために使われた種子や肥料や飼料などの資材はどこから来たのでしょうか? さらに、それら食材や資材を作るためにどれほどの農地や水が使われ、どれほどの温室効果ガスが排出されたのでしょうか? こう考えると、夕飯1食だけでも、世界中の産地や資源とつながっていることがわかってきます。加えて、農地や水は何世代も受け継がれる限りある資源なので、あなたの夕飯はまだ生まれていない将来世代ともつながっています。
しかし、こんなことを言われてもピンとこないはずです。というのも、人間の認知能力には限界があり、複雑な現実を複雑なまま理解できないからです。そして、そのような現実と人間の認知のギャップ、いわゆる「人間らしさ」が、様々な「食」の問題を引き起こしています。
あと一歩で解決できていない「食」の問題
「人間らしさ」のせいで、技術的にも経済的にも解決できるはずなのに、あと一歩で解決できていない「食」の問題は少なくありません。どんなに良い技術や解決策を提供しても、それらを活かせるかどうかは、結局のところ人の選択次第だからです。たとえば、肥満や栄養不足や下痢による乳幼児の死亡などは、もっと削減できるはずなのですが、「人間らしさ」が邪魔をして、なかなか削減が進みません。
食の選択と人間らしさの難しさ
同様の問題は、あなたの普段の食生活でも起こっています。普段の「地球や未来への影響を無視した食生活」は、地球環境や将来世代の食に想像以上の悪影響を与えています。そこで、そのような悪影響にも配慮した「健康的で持続可能な食生活」への関心が世界的に高まっており、特に肉の食べ過ぎを減らすための植物性代替肉などが注目されている所以です。そのような食生活をより多くの人々に実践してもらうためには、技術や経済面だけでなく、「人間らしさ」も考慮に入れた社会的仕組みが必要となり、行動経済学など新たな知見を取り入れた研究が進行中です。
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早稲田大学 政治経済学部 准教授 下川 哲 先生
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