「裸足走」はなぜ効果的? 「走る」を科学で解き明かす
「走る」のメカニズムを知る
「走る」という運動は、特別な動きではないため、改めて教わる機会のない人も多いでしょう。しかし、メカニズムを理解し練習することで、実は能力の向上が確実に見込める動作でもあります。スポーツ科学の分野では、その根拠をデータから導き出し、仮説と検証を繰り返しながら、理論の体系化、さらに将来的な教育現場へのフィードバックも視野に入れて研究を進めています。
2つの軸のバランスが鍵
特に陸上競技の短距離において軸となるのは「接地時間」と「歩幅」です。接地時間は文字通り地面に足がついている時間のことで、この時間に足から地面に力が加えられ、推進力を生み出します。もちろん、接地時間が短いほうがタイムロスを軽減できますが、短すぎると力が加わらず、推進力をロスしてしまいます。つまり、歩幅との最適なバランスを見つけることが疾走能力向上の鍵なのですが、これはまさに十人十色で、個々の最適なバランスを見つける作業が必要になってきます。
機能的なフォームをつかむ裸足走
ここ数年、新たに注目されているトレーニングが「裸足走」です。東京オリンピックにも出場した兒玉芽生選手が取り入れ、タイムを伸ばした裸足走は、接地時間と歩幅のバランスを見極めることを含めた「自分の体をどう使うか」を向上させられる練習法として効果が実証されています。足の裏はさまざまな刺激中枢が密集した場所です。裸足で走ることは、一番安全かつ自然な場所に無意識に足を運ぶことにつながり、理にかなった、体が最も有効に機能するフォームを見いだせます。また、シューズの特性や機能性に頼らないことで、本来の足の力や機能を習得できることも研究からわかってきました。
裸足走は一例ですが、こうしたトレーニングの効果、またはさまざまな因果関係などを分析し、体系化が進められています。そして、世界的には必ずしも体格が恵まれているわけではない日本人アスリートが、世界のトップに立つ日がやってくるかもしれません。
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