自分の意思が伝えられない患者の思いや欲求をくみ取るには
意思が伝達できない患者の思いに応える
さまざまな病気や障がいで、体を動かしたり、話したりすることができない患者がいます。その人たちは日常の中で「汗をかいたので拭いてほしい」「体が痛いので、クッションを当ててほしい」など、伝えたい意思や欲求をたくさん持っています。そんな患者の様子を観察して、「眉が少し動いたから、気持ち悪いのかな」「背中に赤みがあるから、クッションを挟んでみよう」などと考え、看護師は対処しています。つまり患者の意思をくみ取ることは、看護師一人ひとりの力に委ねられているのです。
頼りは、看護師の意欲や感覚
実際に看護師たちはどのように患者の意思をくみ取って支援しているのでしょうか? 調査によると、看護師たちは意思をくみ取ろうという意欲を持ったうえで、感覚を研ぎ澄ませ、そこから患者の目や眉や口の動き、声のトーンなどの「生体からのサイン」を感知して、支援しているという過程がわかりました。看護学では、「この方法でやればいい」と科学的に解明されている技術もありますが、このような解明されていない部分も多くあります。今後、支援するための科学的な指標ができれば、看護師一人ひとりの意欲や感覚に頼らなくても、質の高い支援が均一にできるようになるでしょう。
患者が最期まで豊かに暮らすための支援
医療現場では、ほかにもさまざまな選択をする場面があります。口から食事がとれなくなったとき、鼻から管を通して栄養をとる方法を選ぶのか? 療養の場として、施設と自宅のどちらを選ぶのか? 本人が意思を表明できないときは家族が代わりに決定するしかありませんが、果たしてそういう仕組みでいいのかも大きな問題です。そこで、事前に治療や療養の要望を本人が明らかにしておく「アドバンス・ケア・プランニング」や、意思を伝達できない患者が最期まで自分らしく豊かに暮らしていけるように支援する「エンド・オブ・ライフケア」の取り組みが注目されています。
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宇部フロンティア大学 看護学部 看護学科 講師 礒村 由美 先生
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