講義No.11288 看護学

自分の意思が伝えられない患者の思いや欲求をくみ取るには

自分の意思が伝えられない患者の思いや欲求をくみ取るには

意思が伝達できない患者の思いに応える

さまざまな病気や障がいで、体を動かしたり、話したりすることができない患者がいます。その人たちは日常の中で「汗をかいたので拭いてほしい」「体が痛いので、クッションを当ててほしい」など、伝えたい意思や欲求をたくさん持っています。そんな患者の様子を観察して、「眉が少し動いたから、気持ち悪いのかな」「背中に赤みがあるから、クッションを挟んでみよう」などと考え、看護師は対処しています。つまり患者の意思をくみ取ることは、看護師一人ひとりの力に委ねられているのです。

頼りは、看護師の意欲や感覚

実際に看護師たちはどのように患者の意思をくみ取って支援しているのでしょうか? 調査によると、看護師たちは意思をくみ取ろうという意欲を持ったうえで、感覚を研ぎ澄ませ、そこから患者の目や眉や口の動き、声のトーンなどの「生体からのサイン」を感知して、支援しているという過程がわかりました。看護学では、「この方法でやればいい」と科学的に解明されている技術もありますが、このような解明されていない部分も多くあります。今後、支援するための科学的な指標ができれば、看護師一人ひとりの意欲や感覚に頼らなくても、質の高い支援が均一にできるようになるでしょう。

患者が最期まで豊かに暮らすための支援

医療現場では、ほかにもさまざまな選択をする場面があります。口から食事がとれなくなったとき、鼻から管を通して栄養をとる方法を選ぶのか? 療養の場として、施設と自宅のどちらを選ぶのか? 本人が意思を表明できないときは家族が代わりに決定するしかありませんが、果たしてそういう仕組みでいいのかも大きな問題です。そこで、事前に治療や療養の要望を本人が明らかにしておく「アドバンス・ケア・プランニング」や、意思を伝達できない患者が最期まで自分らしく豊かに暮らしていけるように支援する「エンド・オブ・ライフケア」の取り組みが注目されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

宇部フロンティア大学 看護学部 看護学科 講師 礒村 由美 先生

宇部フロンティア大学 看護学部 看護学科 講師 礒村 由美 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

看護学、基礎看護学、老年看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

看護学は、いろいろな人の生活、生き方に触れることができる点で、とても魅力的な分野です。いろいろな人との関わりが、あなたの人生を豊かにしてくれると思います。
看護に興味があっても、人と話すことが苦手だと迷っているとしたら、心配しないでください。大学生活や実習を経験し、さまざまな人と出会い、人とかかわる楽しさがわかると、自然に話すことができるようになります。人とかかわることが好きであれば大丈夫です。あまり自分の適性、自分の道を狭めず、挑戦してください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

宇部フロンティア大学に関心を持ったあなたは

宇部フロンティア大学は明治36年創立の伝統を誇る学校法人香川学園が母体で現在、幼稚園、中学校、高等学校、短期大学部、大学、大学院、大学院附属臨床心理相談センター、大学附属文京クリニックおよび宇部環境技術センターからなり、山口県の教育・研究の一大拠点として地域への人材供給を含む地域貢献に取り組んでいます。大学では、学園の創始者(香川昌子)の教育精神である「人間性の涵養と実学重視」を建学の精神とし、「あなたらしさを仕事力に」というキャッチコピーを掲げて、一人ひとりの個性を重視した教育を行っています。