多様化する社会に合わせて変わる「民法」
自由と平等を基本原則として
民法とは、自由と平等を基本原則として、日常的な取引や契約などを規律する市民のための法律です。そのため、市民の意識や生活様式の変化に合わせて改正されていきます。
「相続」を見てみましょう。遺産相続のために遺言状を書いても、その通りに相続できないことがあります。例えば、友人に全財産を与えると書いて家族の相続分がゼロになったとき、民法で規定された遺留分を請求すると、友人は全財産は、相続できないのです。自由という原則からは、自分の遺産は誰に譲っても構わないはずですが、家族が最低限確保できる財産として遺留分が規定され、一定の割合の財産は家族が取得できることになっています。
時代背景に合わせた法改正
民法が制定された明治29年は平均寿命が40~50歳であり、既婚男性が亡くなった場合、残された家族は幼い子どもと稼ぎの少ない妻となることが多かったことから家族を保護する観点が強く、また家制度の時代であるために先祖から伝えられた財産を外に出さないという考えがあったのです。遺留分の制度は平成30年に大きな改正が行われました。現代は平均寿命が80歳を超え、遺族である子どもはほとんどの場合成人です。ともに収入のある夫婦が増え、残された家族を守るという観点は薄らいできました。介護の担い手は家族から福祉サービスに移り、最後にお世話になった介護者や施設に財産を与えたいと望む人も増えています。このような時代背景に合わせ、遺言状を書いた本人の意思を尊重する流れに合わせて民法が改正されたのです。
社会を反映する改正
現在の日本では夫婦別姓が選択できず、離婚時には夫婦どちらかが親権を取得する単独親権です。一方で世界を見れば、結婚後も別姓が選択でき、離婚後も夫婦共に親権を持てる共同親権が制度化されている国もあります。多様化・グローバル化する社会に適合するように、民法はこれからも変わり続けるでしょう。その議論のためには、現代の人々の意識を敏感に察知し、研究を続けていくことが必要です。
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大阪大学 法学部 法学科 教授 青竹 美佳 先生
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