固くて柔らかい民法
民法と裁判
交通事故に巻き込まれてケガをした、工場の排煙でぜんそくになってしまった、悪徳商法にひっかかってしまった、バイト先のお店がアルバイト代を支払ってくれない……。
裁判所は、訴訟が持ち込まれると、法律に従って判決を下します。六法全書には6つだけでなくたくさんの法律が載っていますが、一番よく裁判に登場するのが、「民法」という名前の法律です。さきほどの例も、民法のルールに従って解決されることになります。そのため、民法は条文の数も多く、1000条をこえています。
民法の誕生は明治
日本の民法が誕生したのは、今から100年以上も前の1898年(明治31年)のことです。当時の先進国のフランスやドイツの民法を参考にして作られました。その後、家族や相続に関する部分は1947年に大改正がされましたが、それ以外の部分は、実は誕生当時からほとんど変わっていません。最近の2004年の改正で、それまでのカタカナ・文語体からひらがな・口語体へと、外見だけはリニューアルされましたが、条文の中身は、大部分が立法当時のままなのです。
長生きの秘密
しかし、現在と同じような交通事故や公害や消費者問題が、明治の昔から登場していたわけではありません。明治時代に書かれた法律を使って、現代的な紛争を裁判所が公平に解決できている裏には、ちょっとした秘密があります。条文の言葉自体は変わっていませんが、その条文がどういう意味なのか、どのような内容のルールがそこに書いてあるのかという理解(解釈といいます)は、昔と今とでずいぶん違ってきているのです。裁判所が条文の解釈を変更して、同じ言葉を新しい意味に読み替えることは珍しくありませんし、ときには、条文の行間に新しいルールを読み込むことすらします。これは裁判所が新たな条文を書き足すようなものです。法律には、このように意外に柔軟なところがあり、だからこそ、民法も100年以上現役であり続けているのです。
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