講義No.10843 食物・栄養学

水の炎(過熱水蒸気)を使って食材を美味しく調理加工

水の炎(過熱水蒸気)を使って食材を美味しく調理加工

食生活を豊かにする食品加工技術

コンビニエンスストアやスーパーマーケットで売っているお弁当や総菜、冷凍食品は昔よりも美味しくなったと思いませんか。消費者により満足してもらうためには、農産物や海産物などの食材をおいしく加工する製造技術が欠かせません。そんな先端加工技術の一つに食材のおいしさを損なわないで加熱することができる「過熱水蒸気」という技術があります。過熱水蒸気を食材の加熱や焼成に使うと美味しさや色調の保持、油の酸化が抑制されるだけでなく、賞味期限をのばす殺菌効果もあるため、近年では業界大手のコンビニチェーンでも弁当や総菜の調理に採用しています。

過熱水蒸気が食材をおいしく加工する理由

実は過熱水蒸気はあなたも日常的に見ることができます。やかんのお湯が沸騰すると出口から水蒸気が吹き出してきますが、出口付近は透明です。その部分が100℃以上の過熱水蒸気で、食品加工ではその部分のみを用いて加熱処理を行います。ブロッコリーやホタテはゆでると味が抜けてしまい、魚は焼くと油が酸化して臭みがでてしまいます。しかし、過熱水蒸気では高温の水蒸気で満たされた無酸素雰囲気状態(乾いた蒸気といいます)で加熱や焼成を行うので、品質が劣化せず、おいしさを長く保つことができるのです。

現在行われている研究

これまでは過熱水蒸気を用いた食品のメリットについての研究が多かったのですが、最近は過熱水蒸気の高い熱量や無酸素雰囲気を利用した研究が精力的に行われています。食品の中には一度冷凍すると十分な品質で再加熱できないものがたくさんあります。例えば揚げたての天ぷらは美味しいですが、冷凍した天ぷらを電子レンジで再加熱するとふにゃふにゃになります。またオーブンで加熱するとこげたり、ガリガリになってしまいます。過熱水蒸気で再加熱するとカリッと揚げたてに近い食感に戻すことができます。まだ研究開発段階ですが、居酒屋や外食チェーンなどでメニュー化が可能となることから実用化が期待されています。

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先生情報 / 大学情報

酪農学園大学 農食環境学群 食と健康学類 教授 阿部 茂 先生

酪農学園大学 農食環境学群 食と健康学類 教授 阿部 茂 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

食品学、食品加工学、食品製造学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたも高校ではは実習や文化祭、または部活動などで、「食品を作る」という経験をしたかもしれません。高校では作ることを学び、大学ではその食品がどのような技術・メカニズムで作られているのかを学ぶことができます。例えばジャムはどうしてゲル化するのか、どうしてコンビニのお弁当はおいしくなったのかなど、大学での研究はこれまでの経験が生きてくるのです。ぜひ普段から、食についてのアンテナを張って情報収集をし、「どうしてこうなるの?」「この食品はどうして売れているの?」など、好奇心や探究心を育てておいてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

酪農学園大学に関心を持ったあなたは

北海道の政治・経済の中心都市札幌から快速電車で10分、本学はそこに132haの広大なキャンパスを構えています。世界の人口が増幅を続ける中、40%前後の我が国の食料自給率は、今後ますます問題となるのは確実です。そうした環境下にあって、大地を健やかに育て、健康な食物を育み、それを食して健やかな人が育つ。こうした「循環と共生」をテーマに掲げながら、学生一人ひとりの個性や能力を最大限に引き出せるような教育を実践することを使命と考えています。