カラフルなチョコレート=体に悪い は本当?
あらゆる食べ物の中に存在するカドミウム
日本ではかつて、イタイイタイ病という公害病が発生しました。鉱山から流れ出たカドミウムが原因でした。実は、私たちはこのカドミウムを毎日ごく少量ずつ食べています。カドミウムは環境の中に広く存在し、植物やそれを食べる動物に少量ですが含まれているのです。日本では主食となる米から最も多く摂取しており、生産段階での低減対策や検査が実施されています。現在の推定摂取量は耐容摂取量(健康障害が出る摂取量)を下回っていることから、通常の食生活でカドミウムにより健康が損なわれることはありません。
「何を」ではなく「どれだけ」
食品中のすべての化学物質は摂取する総量が問題であり、日本では安全を考慮した1日摂取許容量(ADI)が設けられています。これは、カドミウムのように意図せずに食品に含まれる物質だけでなく、食品添加物のように人為的に加えるものも対象です。極めて少量でも有害なものはそもそも使用が禁止されており、それ以外の化学物質は摂取許容量の範囲内で使われています。摂取許容量の範囲内なら健康上問題ないにもかかわらず、添加物はすべて体に悪いというような考えを持つ人が少なくありません。
また、天然物は安心で合成品は危険という考えがあります。添加物といっても、もともとは天然由来のものもあります。例えば、保存料として使われている安息香酸は、安息香の木という植物の葉を食品の保存に使ったことに始まります。その後、葉から有効成分を抽出して使用するようになり、化学工業の発達で安息香酸そのものを合成するようになったのです。
情報が不安をあおる
カラフルなチョコレートと、自然な着色のチョコレートを並べたとき、小さな子どもはカラフルな方を選び、ある程度の年齢になると自然な色の方を選ぶ傾向があります。自然な色の食べ物を好む感覚は生まれつきのものではなく、着色料が体に悪いという不安情報に起因している可能性があります。あやふやな不安情報に影響されて、安全な食品を過度に不安視して食べていると言えます。
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先生情報 / 大学情報
岐阜女子大学 家政学部 健康栄養学科 教授 臼井 宗一 先生
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