体に「良い脂肪」と「悪い脂肪」を分けるのは何?
脂肪は嫌なヤツ?
あなたは体についた脂肪(体内の脂肪組織)について、どんなイメージを持っていますか? 肥満につながるという印象から、あまり良いイメージを持っていないかもしれません。確かに肥満は、動脈硬化や脂質異常症、糖尿病など、さまざまな病気の原因になります。しかし、一方で脂肪組織は、体のエネルギーバランスを整えてくれる内分泌器官として機能しているため、体に適度に脂肪がついていないと、私たちの体は正常に機能してくれません。すなわち、脂肪は人間が生きていく上で必要不可欠な存在でもあるのです。
「良い脂肪」と「悪い脂肪」がある?
脂肪が、私たちにとってプラスに働くか、マイナスに働くかは、脂肪細胞の質によって決まります。脂肪細胞には、体に「良い働き」をするものと、「悪い働き」をするものがあります。前者は小型の脂肪細胞、後者は肥大化した脂肪細胞です。
小型の脂肪細胞は、細胞内に糖質や脂質を取り込んでエネルギーを貯蔵することができる上に、周辺の細胞にも糖や脂肪の取り込みを促す物質を分泌します。すなわち、血中の糖質や脂質を減らし、糖尿病や脂質異常症などの病気になるのを防ぐ働きをしているのです。一方、肥大化した脂肪細胞は自分自身に「これ以上糖質や脂質を取り込むな」という命令を出す物質を分泌するだけでなく、周辺の細胞にもそれを促します。つまり、小型の脂肪細胞とは真逆の働きをしているというわけです。
肥満でも健康?
小型の脂肪細胞は皮下脂肪に多く存在し、肥大化した脂肪細胞は内臓脂肪に多く存在します。そのため、一見同じような肥満体型でも、皮下脂肪型の人は、病気になりにくくて健康的ですが、内臓脂肪型の人は病気になりやすくて不健康です。
脂肪細胞の肥大化や内臓脂肪の増加を防ぐには、運動の習慣やバランスの良い食生活、規則正しい生活習慣を維持することが大切になります。そのため、例えば、相撲部屋で毎日規則正しく生活する現役力士は、肥満体型でも健康な人が多いのです。
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東京農業大学 応用生物科学部 食品安全健康学科 教授 高橋 信之 先生
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