「そもそも」から物事を考える、メタ倫理学の面白さ
第3の倫理学とは
大学で学ぶ倫理学は、人はどのように生きていくべきなのかを深く考える学問です。倫理学は大きく3つに分かれています。1つめは規範倫理学で、「人間がやるべきこと」「人に認められる人生とは何か」など、世の中の規範について考える分野です。2つめは応用倫理学で、社会で起こっている具体的な問題にどのように対応するのかを研究します。第3の倫理学といわれているのが、メタ倫理学です。倫理学の中で基本的に前提となっていることを、「本当にそうなのか」と考えてみる学問です。「『よい』『悪い』とはどういう意味なのか」「本当に倫理的に行動しないといけないのか」など、そもそもの問題を考える研究です。メタ倫理学が本格的に研究されるようになったのは百年ほど前からで、倫理学の中では新しい分野です。
社会が大きく変わるときに生まれたメタ倫理学
メタ倫理学の研究が進んだ背景の一つには、近代の科学の発達の影響があります。それまで、倫理は宗教と結びつけられることが多かったのですが、科学の時代がやってきて、新しい倫理のあり方が模索されるようになりました。また、20世紀前半には第一次、第二次世界大戦が起こり、人々が倫理と向き合う必要があると考えられるようになったのです。
自分で考え、自分で納得する
倫理や道徳に対して、「~しなくてはいけない」「~してはいけない」と、押し付けられるものというイメージを持つ人もいるでしょう。そこをメタ倫理学の視点で、例えば「どうして人に親切にしなくてはいけないのか」などと、「そもそも」の点から考えてみることに意味があります。社会ではそうだから、先生や保護者がそう言うからということではなく、自分で考えて、「~だから、こうなんだ」と答えを導き出すのです。また、物事を「そもそも」のところまで戻って考えてみると、別な考え方やアプローチの方法を思いつくことがあります。メタ倫理学を通して世の中を考えてみることで、新たな発見があるのです。
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専修大学 文学部 哲学科 教授 佐藤 岳詩 先生
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