持続可能な都市について倫理学の観点から考える
倫理学と都市
都市にはさまざまな技術が導入されており、それらが複雑に関係して人間の生活を成り立たせています。特に新たな技術が次々と開発されている現代は、最新技術を抜きにして都市を語ることはできなくなりました。例えば、「自動運転やAIといった最新技術が都市に組み込まれると何が起こるのか」というテーマです。このときひとつの技術だけに注目するのではなく、関連する技術や分野などを含めて複合的に考えることが求められます。
自動運転車は環境負荷を下げる?
自動運転を取り巻く倫理学の議論に注目してみましょう。自動運転には「運転の無駄がなくなり環境負荷が下がる」というメリットがあると考えられます。ただし「自動運転の車を増やすことが環境保護に最善」とは言い切れません。そもそも車の数自体を減らすほうが、環境への負荷が下がるからです。そのため「自動運転技術には賛成だが、車は減らしていくべきだ」という意見を持つ人々は、都市の自転車道や歩道をしっかりと整備して車以外の移動手段を使いやすくする、などの案を出しています。このように環境や都市の構造などさまざまな観点から新技術のメリットや課題を議論することで、持続可能な都市を実現するための方法が見えてくるかもしれません。
「公正な移行」は可能か
持続可能な都市に関する議論では「公正な移行」というキーワードが出ることがあります。環境問題解決に向けた取り組みを進めていく際に、「社会の変化の中で取り残される人がいないような方法をめざす」のが公正な移行です。もし社会全体で車を減らす取り組みに力を入れた場合、車産業に関わる人々の多くが職を失ってしまうでしょう。たとえ車を減らすことが「正しいこと」とされても、その過程で困難を経験する人を無視していいわけではありません。どうすれば持続可能な都市を公正に実現できるのかは、倫理学にとっても重要な課題です。
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