日本のプロ野球で活躍する外国人選手はなぜ「42」をつける?

なぜ背番号「42」?
日本のプロ野球を見ていると、外国人選手、特にアフリカ系の選手が「42」の背番号を好んでつけていることがわかるでしょう。かつて、白人選手のみの世界だったメジャーリーグ(MLB)で、黒人選手活躍の道を切り開いたのがジャッキー・ロビンソンという選手でした。彼は黒人として初めて近代メジャーリーグに出場し、42の背番号をつけて大活躍しました。現在この背番号はMLBの全球団で永久欠番となっているため、アメリカでは誰も使用できません。ゆえに日本のプロ球団に入った外国人選手たちは、この歴史的な番号を、敬意をこめて選ぶのです。
メッセージはどう届いたか
ジャッキー・ロビンソンは日米野球で日本を訪れたことがあります。これはアメリカ政府が主導した文化交流の一環でした。冷戦期だった当時、アメリカ政府はこの文化外交を利用して「人種差別のないアメリカ」や「アメリカのスポーツのすばらしさ」という政治的メッセージを発信したのです。一方、敗戦後間もない日本で、ロビンソンは「ブラックサムライ」と呼ばれ、彼の生き方は道徳教育でも取り上げられました。一つの事象が国際関係や社会的文脈の中で異なる意味をもち、アメリカ側の思惑を超えた受け止められ方をしたのは、文化研究の観点からは興味深いポイントです。
スポーツと政治
スポーツは政治と無関係であるべきだという考え方がありますが、実際には両者は密接に関わっています。歴史的にみれば、黒人の人々にとってスポーツは社会参入の数少ない機会の一つでした。そこで得られる注目を戦略的に活用して、社会運動へとつなげてきた歴史があります。近年では黒人に対する人種差別や不当な暴力への抗議運動「Black Lives Matter」が注目されましたが、スポーツの世界では、国歌斉唱中に膝をつくアメフト選手のムーブメントも話題になりました。オリンピックを見ても、政治や人権問題によるボイコットなど、スポーツはさまざまな形で政治と関わっていることがわかるはずです。
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