マンガ、アニメ、映画、舞台~小説だけではない物語を読み解く~
ミステリーの源流は谷崎潤一郎?
『細雪』などを書いた文豪・谷崎潤一郎は、ミステリー要素の強い作品も残していました。その物語性の豊潤さは、のちにミステリーの大家・松本清張に受け継がれています。日本のミステリーの初期を支えたのは江戸川乱歩であり、その怪奇性を受け継いだのが、『犬神家の一族』で知られる横溝正史でした。乱歩、横溝らのおどろおどろしい描写に対して、松本清張は、リアリティのある作品で「社会派」と呼ばれます。このように影響し合ってきた変遷が、現在のミステリー人気につながっています。
『トーマの心臓』のマンガと舞台
文学研究で行われる小説読解の手法は、マンガ、アニメ、映画、舞台などの物語にも生かすことができます。萩尾望都(はぎおもと)のマンガ『トーマの心臓』は、ドイツの寄宿舎における少年同士の友情や葛藤を描いた作品ですが、男性だけによる劇団「スタジオライフ」により舞台化されました。舞台ではエピソードの流れなどを巧みに変更してあり、違いを比較することが、原作の読解にもつながります。
アニメ『ガールズ&パンツァー』の奥深さ
テレビアニメ『ガールズ&パンツァー』は、多くのファンから支持を集め、『ガルパン』の愛称で親しまれています。戦車に乗って対戦するという武道が存在する世界で美少女たちが戦う物語ですが、戦車の描写の緻密さ、第二次世界大戦の知識が豊富に盛り込まれた内容が、ミリタリーマニアからも高く評価されました。
『ガルパン』では、女子のみの学園での友情が描かれますが、『トーマの心臓』や『ガルパン』のような物語は、江戸川乱歩と同時期に活躍した作家・吉屋信子に源流を見ることができます。少女同士の恋愛などを描いた吉屋の作品は、ジェンダー(社会的な性別のあり方)の観点から論じることも可能ですが、のちに与えた影響という面でも興味深いものがあります。1つの物語は、さまざまな側面から、そして、他作品とのつながりからも分析することができるのです。
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専修大学 文学部 日本文学文化学科 教授 山口 政幸 先生
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