これはドラマか? 南米諸国における大統領の弾劾
南米の大統領制
南米の多くの国では大統領制を採用しています。日本の議会制民主主義と異なり、大統領制の国では大統領と国会議員の選挙が別に行われます。そのため大統領の所属政党と、国会の第一政党が異なるという現象も起こります。また米国のように二大政党制の国もあれば、同じ政党内でも意見の対立が起きやすい国、すぐに新たな政党をつくって数十人で大統領選を戦うといった国もあります。多くの国では大統領に4~6年の任期が与えられますが、1990年代以降は大統領の弾劾、つまり任期中にやめさせられるケースが相次いでいます。
弾劾をめぐるドラマ
代表的な例は1999年のパラグアイの大統領の弾劾をめぐる動きです。このときは流血の事態に発展し、副大統領をはじめとして死者も出ました。またペルーでは大統領が弾劾を回避するため自らに反対する政治家に利益供与をもち掛け、それが発覚して2018年に辞任した例もあります。また買収・汚職をもちかけられた側がその瞬間を映像で記録し、最も効果的なタイミングでメディアに暴露するといった事例もあります。大統領の弾劾をめぐっては議国会や政党内での利害関係がさまざまに交錯し、ドラマのような出来事が起こることもあるのです。
民衆の政治参加も弾劾の引き金に
近年では国民による抗議活動が大統領の弾劾を後押しするケースも増えています。南米諸国の人々は政治への関心が高く、自分たちの権利を自分たちで勝ち取り、守ろうとする意識が反対運動につながりやすいと考えられます。一方で任期中に大統領を弾劾することは政治に混乱を招き、民主主義が断絶するとして任期を終えるまでは弾劾をせずにおこう、という運動も見られます。
政治学の中の比較政治論という研究分野では、こうした南米諸国の大統領の弾劾も重要なテーマの一つです。政党内外での対立、国民の政治への思いなど、さまざまな要素が絡み合う大統領の弾劾について、国と国、あるいは時代ごとに丹念に比較しながら、その特徴を明らかにしていきます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
神田外語大学 外国語学部 イベロアメリカ言語学科 スペイン語専攻 准教授 磯田 沙織 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
政治学、比較政治論先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?