自主独立のフランス外交

自主独立のフランス外交

大国として振舞うフランスのパワー

フランスは、自国の国際的地位に固執し、大国のような振舞いをしてきました。しかし、これは、フランスの傲りではなく、冷戦期に米ソ超大国に挟まれる中で、フランスが自国の存在意義を保つためにとった苦肉の策なのです。

フランスの自主独立外交

フランスは、冷戦期、ソ連の脅威にさらされつつも、安全保障を同盟国アメリカへ依存しないことが重要だと考えました。こうしてフランスは、核兵器保有を国防の手段としてのみならず、国際的な影響力を高める手段として捉えてきました。同盟国アメリカに従属しない自主独立の外交を展開する上で、核保有は不可欠だという考えは冷戦期に生まれたのです。とはいえ、最近は、ローマ教皇が核抑止を否定したり、核兵器禁止条約の締約国会議が実施されるなど、核保有国に逆風が吹いています。よく言われるのと違って、フランスは核軍縮を全否定しているわけはないですが、核抑止と平和の関係が科学的に証明できないことで苦戦を強いられています。
また、フランスは、2015年に対シリア軍事介入を始めました。その後、シリアを拠点とするイスラム過激派組織によるテロがパリで勃発し、シリア軍事介入は重要性を増しました。しかし、フランス政府はアサド政権と外交関係を断っています。そんな中でのシリア軍事介入ですから、フランス国内でも論争があります。何を優先課題として誰と手を結ぶのか、は外交問題の要です。

EU自立をどう進めるか

フランス外交の軸となっているのはヨーロッパ諸国との協力関係です。フランスは、自国の安全は欧州連合(EU)の安全と共にあるとし、域内大国としてのリーダーシップを発揮しています。しかし、急速なEU東方拡大により、EU内で摩擦が生じ、また、ウクライナ情勢により北大西洋条約機構が支配的となり、EU自立を望むフランスは孤立を余儀なくされています。こうした状況に頭を悩ませるフランスが今後どのような外交を展開していくのか、国際政治分野から注目が集まっています。

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上智大学 外国語学部 フランス語学科 准教授 小島 真智子 先生

上智大学 外国語学部 フランス語学科 准教授 小島 真智子 先生

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国際政治学

先生が目指すSDGs

メッセージ

国際政治を勉強するとき、アメリカに注目して英語で勉強するのは伝統的な手法です。しかし、フランスや北アフリカ諸国、カナダのケベックなど、フランス語圏地域を勉強する場合、英語では限界があるので、フランス語を使った国際政治の研究にチャレンジしてみてほしいです。英語では説明されないことや、日本やアメリカの視点によるものとはひと味ちがった世界が見えてきます。

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上智大学に関心を持ったあなたは

日本初のカトリック大学として開学し、創立当初から国際性豊かな大学として、外国語教育に重点を置いてきました。留学制度も充実しており、世界約80ヶ国に390校以上にも及ぶ交換留学・学術交流協定校があり、コロナ禍の2020年度、2021年度を除き、毎年約1,000人の学生が世界の様々な国や地域へ留学しています。また、少人数教育も本学の伝統のひとつです。教員と学生の距離が近く、また学生同士が率直に意見を交し合う、きわめて理想的な教育環境が整っています。他者を思いやり、社会に奉仕できる人材を育成します。