江戸時代の新聞「瓦版」から、当時の庶民文化が見えてくる
江戸時代の庶民の貴重な情報源
新聞もテレビもインターネットもなかった江戸時代、人々はどうやって情報を手に入れていたのでしょうか? この時代の庶民が情報を得る手段、それが「瓦版(かわらばん)」でした。瓦版は、一枚から複数枚の紙に木版印刷された、今でいう新聞に近いもので、「読売」や「絵草子」などと呼ばれることもあります。
17世紀後半から19世紀後半まで、江戸や大阪、京都などの大都市圏を中心に発行されていました。金額は現代のお金にすると100円程度だったため、庶民でも気軽に購入できました。幕府は、瓦版の発行を表向きには禁止していましたが、庶民からの根強い需要があったため、顔を隠した売り子によって、こっそり売り続けられることになったのです。
災害情報やゴシップ記事が人気
では、瓦版にはどんな内容が掲載されていたのでしょうか。多かったのが、火事や地震など人々の生活に直結する「災害」に関する記事です。また、人魚など未確認生物に関する記事や、恋愛がらみの事件の記事も人気があったようです。現代人がUFOや超能力といった不思議な現象や、芸能人のゴシップをワイドショーなどで見る感覚と共通するものがあります。ほかにも、幕末に黒船が浦賀沖に来航した際は、船の外観や乗組員の姿などの情報が瓦版を通してどんどん広まりました。2度目の来航の際は、沿岸に出店が出て多くの人が見物に来るほどでした。
瓦版を通して豊かな江戸の庶民文化が見えてくる
このように、瓦版は庶民の好奇心を満たすために非常に重要なものでした。それゆえ、瓦版を研究することで、さまざまなことが見えてきます。例えば、江戸時代の流行や庶民の関心事はもちろん、瓦版を作るために必要な情報伝達の仕組みや印刷技術、庶民の教養や思想などまでわかってきます。瓦版は江戸の庶民文化を読み解くための絶好の教科書だといえるでしょう。
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大阪学院大学 経済学部 経済学科 教授 森田 健司 先生
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