「お酒」を主食とする人々の食文化を知る
人類とお酒の歴史は紀元前から
「お酒」というと酔っ払う、太る、といったネガティブなイメージを耳にすることがあります。日本の酒税法では、アルコールを1度以上含むものは「お酒(酒類)」とされるため、みりんなどの調味料もお酒に含まれています。実は、お酒と人類の関わりは紀元前から続いています。地域によって関わり方も多様で、神様への捧げ物であったり、薬であったり、給料やご褒美だったりもしました。そして、世界には生活に欠かせない栄養源としてお酒を主食としている人々もいます。
お酒を主食とするデラシャの人々
エチオピアはアフリカ大陸の北東部に位置する内陸国です。そこに暮らすデラシャという民族の人々は、アルコール度数3%ほどの「パルショータ」というお酒を主食にしています。この地域は降水量が少なく不安定で、野菜や豆類が安定して育たないため、水分と栄養の補給に大人は1日に5キロものパルショータを飲みます。発酵パンと穀物団子のようなものもありますが、夜食につまむ程度でエネルギー源ではありません。日本人の感覚からすると栄養状態に不安が生じますが、デラシャの人々の栄養状態は安定しています。もろこしやとうもろこしを主原料にしたパルショータはアミノ酸を豊富に含んだ総合栄養食であることがうかがえます。
地域に溶け込み文化を知る楽しさ
そんな生活で酔っ払ってしまわないのかという疑問が浮かびますが、アルコール濃度が低いお酒であり、基本的に農作業をしながら飲むため代謝が早く、酩酊することは稀です。味も甘味と酸味があって飽きずに飲み続けられる味わいで、同様にお酒を主食としている民族のお酒の味はそれぞれ異なっています。彼らにとってお酒は重要な栄養源であり、働きながら元気で楽しく豊かに生きるために摂取します。
日本の気候からは想像しにくいのですが、世界では乾燥・半乾燥地帯が多くの面積を占めます。異なる気候環境で発展した食文化を知ることは、改めて日本や私たち自身を知ることにもつながります。
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先生情報 / 大学情報
新潟大学 創生学部 助教 砂野 唯 先生
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地域研究学、食文化、比較人類学先生が目指すSDGs
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