太陽の「熱」を使って発電し、水素を作ろう!
太陽熱発電の仕組み
集光した太陽光で熱した水やオイルをエネルギー源に発電するのが「太陽熱発電」です。スペインのプラントを例にあげると、広大な土地に鏡を敷き詰め、中心にあるタワーに光を集めます。タワー上部には溶融塩というオイルがくみ上げられていて、太陽熱により温められます。一定温度まで達したらオイルをタワー下部に戻し、このオイルの熱を使ってタービンを回します。太陽電池を使う太陽光発電と比べるとなじみの薄い太陽熱発電ですが、アメリカやアフリカなど世界各地で実用化されています。
エネルギーを熱のまま貯蔵
熱を電気に変えると長期の貯蔵が難しいため、オイルは高温状態のままタンクに入れて保存します。電気の代わりに熱を貯めたバッテリーと考えるとわかりやすいでしょう。できるだけ高温で貯めたほうが使うとき便利なため、より高温に耐えうる溶融塩の開発や低コストの合成油を使う方法、高密度の熱貯蔵の方法などが考えられています。
最先端の研究が、空気や溶融塩で高温熱を運び、熱伝導の良い金属材料に熱貯蔵する方法です。高温で分解しない溶融塩の開発や熱の出し入れに優れた金属系の熱貯蔵材料の開発はヨーロッパやアメリカで活発に研究されています。
酸化還元反応に太陽熱を使い水素を作る
太陽熱を化学反応に使い、水素を製造する方法があります。熱で水を分解しようとすると4000℃の高温が必要になるため、化学反応を複数回に分けます。例えば酸化還元反応を使うと、金属酸化物の酸素を抜いて水蒸気と反応することで抜けた部分に酸素が取り込まれ、水素だけを取り出せます。水蒸気の代わりに二酸化炭素を使えば、一酸化炭素を得ることもできます。水素と一酸化炭素は化学合成の基本原料のため、飛行機のジェット燃料はもちろん服の繊維なども作ることができます。多少のコストがかかっても再生可能エネルギーだけで水素が作れて、一酸化炭素も得られると考えれば、人工油田と考えることもできるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
新潟大学 工学部 工学科 化学システム工学プログラム 准教授 郷右近 展之 先生
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