自由な貿易は、発展途上国にどのような影響を与えるか
発展途上国と自由貿易
発展途上国が経済的発展を遂げるためには、他国との貿易が不可欠です。これまでも、先進国と途上国との間で企業による貿易や直接投資が数多く行われており、特に近年はRCEP(地域的包括的経済連携協定)やTPP(環太平洋パートナーシップ協定)といった、加盟国間の関税を引き下げる貿易協定が盛んに結ばれています。その中でも近隣国の経済を統合し、域内の経済活動を自由に行う「地域経済統合」はより進歩的な取り組みです。アジアでは、ASEAN(東南アジア諸国連合)が地域経済統合を形成することで目覚ましい経済発展を遂げています。
経済成長のエンジン
こうした国際貿易の分野において注目を集めているのが「グローバル・バリュー・チェーン(GVC)」です。ある製品が開発され、最終的に消費されるまでには、部品の製造、組み立て、販売などさまざまなプロセスがありますが、現代ではこのプロセスに多くの国々が関わっています。現在の世界貿易の50%以上がGVCに関連しているともいわれており、途上国にとってはGVCに入ることが、経済発展を左右するほど大きな意味を持っています。これまでの歴史では、こうした自由貿易が途上国の経済成長の「エンジン」になってきました。一方で、貿易で得た経済発展が都市部と農村の所得格差の拡大につながるなど、国内に新たな課題を生むという事例も見られます。
政策提言にもつながる
自由な貿易を促進する協定が発展途上国に与える影響は、経済学の重要な研究テーマです。国や企業が公開する膨大なデータを収集し、最適な「数理モデル」を用いて分析することで、具体的な効果や影響を明らかにします。こうした専門的な理論や知識は、政策提言につながることも多くあります。例えばある国同士で自由貿易協定を結ぶ前に、各国の経済学の研究者が、協定の具体的な効果を事前に分析して政府に提示し、それが実際の政策にダイレクトに反映されることもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
和歌山大学 経済学部 経済学科 准教授 岡部 美砂 先生
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国際経済学、国際貿易、国際開発経済先生が目指すSDGs
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