自分の信念に命を張った戦前の政治家たち

自分の信念に命を張った戦前の政治家たち

緊縮財政の井上準之助

昭和初期に相次いで大蔵大臣を務めた井上準之助と高橋是清は、緊縮財政(お金を減らす政策)と積極財政(お金を増やす政策)という対照的な経済政策を実行した人物としてよく比較されます。
井上が就任した1929(昭和4)年当時の日本は、不況のどん底にありました。そこで井上は、さらに徹底した緊縮財政を行います。「一時的に経済がもっと悪化しても、力のある優秀な企業が生き残ることで、今は弱い国際競争力は近い将来必ず高まり、日本は貴重な外貨(ドル・ポンド)をもっと稼げるようになる」というのが井上の考えでした。当初、この政策は国民やマスコミに支持されました。しかし、日本の不況は予想をはるかに超えたものになり、マスコミや国民はこの政策に反対するようになりました。結局、井上は政策の失敗を不満に思う団体の一員に暗殺されてしまいます。

積極財政の高橋是清

井上に代わって大蔵大臣となったのが高橋是清でした。彼は国内経済を立て直すために積極財政に転じます。国債(国民に対する政府の借金)を発行して日本円を増やし、日本経済をデフレ(モノの値段が下がる)から脱却させたのです。ところが1931(昭和6)年に満州事変が起こってから、軍は常に軍事費の増額を要求してきました。当時の好景気は戦争関連の産業の好業績に支えられていたのです。しかし、高橋はデフレから転じた過度のインフレ(モノの値段が上がる)を抑えるために、逆に軍事費の縮小に力を注ぎました。これが直接の引き金となり、高橋は1936(昭和11)年、「二・二六事件」で、反乱将校により暗殺されたのです。

「国を良くしたい」という思いは同じ

政策は正反対でしたが、「小さい国である日本を何とか良くしたい」という強い思いは二人とも同じでした。戦前の政治家にとって、自らの信念の化身である政策をやり抜こうとすることは、文字通り、命がけでした。今の政治家の「命をかけて」というセリフとは、まったく重みの違うものだったのです。

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阪南大学 経済学部 経済学科 准教授 今城 徹 先生

阪南大学 経済学部 経済学科 准教授 今城 徹 先生

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経済学、政治経済学

メッセージ

私は日本の経済史、経営史が主な研究テーマで、今は戦前の中小企業金融、M&A、社会保障制度であった恩給について研究を進めています。歴史の面白いところは、自分で史料を探して、自分なりの歴史像を作れることです。もし歴史に興味があるなら、経済学部、経営学部、文学部で学ぶことをおすすめします。また、最近、企業の意思決定や資金調達に関する歴史や現状の分析、あるいは、社会保障制度に関する歴史や現状の分析が盛んに行われています。これらの研究から得た知識は、あなたが社会で活躍するための強い味方になるでしょう。

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