蛍光色素でDNAの謎を解く!
なぜ染色体と呼ぶのか?
細胞核にある染色体は、遺伝情報をつかさどっています。19世紀に発見された時、アニリンという色素を細胞に振りかけたところ、その部分が黄色く染まったので「染色体」と呼ばれるようになりました。
染色体は、核酸のDNAとタンパク質から構成されますが、目で見ることはできません。そこでDNAに色をつけて見えるようにする「イメージング」の研究があります。DNAは基本的にひも状の二重らせん構造をしていますが、三重、四重らせん構造をしたものも存在することがわかってきました。それらを区別するために、蛍光色素で色づけする試薬の開発が進んでいます。
試薬の分子をデザインすると?
二重らせんを見えるようにする試薬は、いくつも存在します。その1つが、クルクル回転する部分を持つ分子がDNAと結合すると、回転を止めて光る仕組みをもつ蛍光色素です。二重らせんと四重らせんを同時に見分けるために、それをもとにクルクル回転する部分を3つつけた分子の試薬がつくられました。それを使った実験では、赤色と近赤外色に見分けられたのです。おそらく二重らせんは2カ所に結合して2つの回転が止まり、1つが回転し続けますが、四重らせんは3カ所に結合して3つとも回転が止まるので、違いが現れたのではないかと推測できます。
寿命や病気に関わっている「四重らせん」
四重らせんの働きは、謎に包まれています。DNAの末端にあるテロメアは、細胞分裂する度に短くなり、細胞の寿命をコントロールすると言われています。また、がんの要因になる遺伝子も存在します。それらの制御に四重らせんが関わっていることが明らかになってきました。このような医療や生命現象の解明に化学のチカラでアプローチする分野が「ケミカルバイオロジー」です。色が変わるなど、特殊な機能を持つ、これら“おもしろ蛍光色素”のような化合物をデザインし、実際につくることで、生体分子の分布や働きを探究することができるのです。
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和歌山大学 システム工学部 システム工学科 准教授 坂本 隆 先生
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