災害時、「助けて、ここにいるよ!」を伝える情報ネットワーク
災害など非常時の情報伝達をどうする?
災害時などには、広範囲で停電となり携帯の電波が使えなくても、情報を共有して避難誘導をすることが必要になります。こうした状況で有効なものに、「アドホックネットワーク」という通信技術があります。これは、スマートフォンなどの端末同士が基地局を介さずに直接情報のやり取りをして伝達していくネットワークです。これにはブルートゥースや無線LANなどの技術が使われます。アドホックネットワークを活用することで、「避難経路に障害物がある」「この区画で火事が起きている」などの情報を随時伝えることができ、同時に外部からの情報も受け取れます。
夜間の情報発信方法を準備しておく
そうした情報伝達ができない場合でも、昼間は運動場など広い場所に石や机を並べて文字を作り、上空からヘリが発見できるようにSOSを発信することが可能です。しかし、夜間はこの方法が使えません。防災用の無線も使えない場合にそなえて、避難所などに誰でも使える安価で手軽な情報伝達手段を用意しておくことが課題です。一例として、上空からも見分けやすいLEDの発光色を点灯変化させて、メッセージを伝える方法が研究されています。事前の取り決めで色によって「孤立している」「病人がいる」「水と食料を!」など、緊急のメッセージを伝達するというものです。
山林で働く人や住民が使えるネットワークも必要
日本は山国であり、林業に従事する人たちは広大な森林に入り少人数で働くことがあります。また、山間部には少人数で暮らす集落も点在しています。そこで、緊急時のみならず日常でも使える連絡網を確保しておくことが望まれます。無線も電気もない場所であっても使える、消費電力の少ない小さな通信設備を設置する研究も行われています。簡易な無線LANでの通信に始まり、もしウェブカメラが使えれば、ネットワーク経由で遠隔地からも山間部の映像を見られるでしょう。山間部とのネットワーク構築は日本全土で必要なものであり、さまざまな方法が研究されているのです。
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和歌山大学 システム工学部 システム工学科 ネットワーク情報学メジャー 教授 塚田 晃司 先生
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